マジバケ小説 | ナノ


化け物が倒れると同時に、雷の手も力を失って崩れ果てる。
漸くガナッシュを取り囲んだ化け物全てを倒した。

「へっ!なんてことねーじゃん!」
「ガナッシュ!!大丈夫!?」
「はへ〜…勝ったの?僕等……勝ったの…?」

化け物を倒したと同時にガナッシュの方へ向かう中、マドレーヌはその化け物を咎める様な顔で近付いた。

「ケルレンドゥ。エキウロクリュなどに殺されるあなたじゃないでしょ?どうしたの?」
「うるさいぞ、マドレーヌ!!俺はケルレンドゥではない!!」
「私達とは争わないって約束はどうしたの?
どうしてエキウロクリュみたいな奴をのさぼらせているの!?
あなたはエニグマの王でしょ?」
「俺は王ではない……エニグマは力の無い奴には従わぬ。誰も俺に従うエニグマはいない。」
「力が無いなんてことないわ。エニグマの中では恐らく一番強い筈だし、他のエニグマもそれを知ってる筈よ」

次々と問いつめるマドレーヌに化け物、ケルレンドゥは更に声を荒くした。

「そんな問題ではない!俺は再び生まれ変わり、王になるために死を選んだ!
邪魔はさせん!!生まれ変わればもうケルレンドゥではない!!
その時はエニグマの大群を率いて、お前達に力を見せてやる!!」

そう叫ぶと丸で逃げるかの如く奥にある空間へと身を投げた。
微かなくぼみがあったそこはだんだん大きくなり、やがてケルレンドゥはその空間へ吸い込まれて行く。

「??????奴はどうしたんですか!?」
「他のエニグマに転生して蘇るつもりだわ。」

マドレーヌの言葉に、そこにいた全員が彼女に方へ振り向いた。

「300年前、ケルレンドゥはグラン・ドラジェに負けて…物質界には手を出さないと約束したの。
おかげで、エニグマの王としての面子が潰されたって事なのかしらね。」

自分を弱さを他人に知られ屈辱を感じる。
そう言った感情は人だけでなく、エニグマにも存在していた様だ。
だが、だからと言って彼等の行為は決して見逃せる様な事ではない。

「留めを刺さなきゃ……。死のプレーンで息の根を止めてしまえば、エニグマでも生き返らないって……!!」

先程とは違い、エニグマを倒そうとするガナッシュ。
けど、そんなガナッシュにマドレーヌは何も言い返えそうとしなかった。

「奴が俺と融合したということにしておけば エニグマはコントロールできる……。
雑魚のエニグマ……それに、人間に取りついてるエニグマ達すべて……。」
「ガナッシュ……凄い事教えてあげようか?」

柔らかい笑みを浮かべて振り向くマドレーヌの言葉にガナッシュは眉を釣り上げた。

「凄い事?」
「魔法を使ってみて。」

マドレーヌの言葉に疑問を抱いたガナッシュは手を伸ばして呪文を唱える。
だが、普段なら一瞬で出て来る闇の魔法が、その手から出る事は無かった。

「……。!!!!!!」
「使える?あなた、さっき一瞬だけど エニグマと融合してたの。
それが解けた時に、魔力を無くしてなければ使えるはずよ。」
「そんな……まさか……!!」
「それでも、あなたはケルレンドゥと融合した振りができる……?」
「……。」
「最強のエニグマはあなたと融合している。次に力を持つエキウロクリュはキャンディと融合してる。
嘘だとバレない限りは、エニグマを自在に操ることができるでしょうね。
どう?この試練を背負っていくのは ガナッシュ、あなたなのよ。出来る?」

エニグマ、それも王であるケルレンドゥと融合した。つまり、どの魔法使いにも負けない最大の力を手に入れたことになる。
だが、今のがナッシュは最大の力どころか魔法そのものさえ使えない。
そんな彼がケルレンドゥと融合した振りをしてエニグマと融合した人と対等に向き合う。
それは発覚された時のリスクを背負わなければならない程の覚悟を持たない限り、決して可能な事ではないだろう。
ガナッシュは目を閉じたまま何も話さなかった。が、やがてゆっくりと目を開けると、クラスメートの1人に近づいて行った。

「……ミエル。やっと分かったよ。もう魔法の力はいらない。魔法なんかなくても……皆を信じることができる。
だから……奴を倒してくれ……。次の1歩を踏み出すために。」
「……。」

自分を見つめる少年の強い瞳に少女は何も答えなかったが、決して目を反らそうとはしなかった。
そして、2人の周りにいたクラスメートもまた、少年の周りを囲んだ。

「ガナッシュ……。」
「…分かったよ、ガナッシュ。もう何も言わねぇ。」
「後は私たちを信じて!」
「ガナッシュ。僕等はいつでも一緒だ。」

皆が掛ける言葉に、ガナッシュは小さく微笑んだ。

「決まったらさっさと行くんだ!!奴を取り逃がしたらまた悪夢の繰り返しだ!!」
「んなもん、言われなくても分かってるって。」
「んじゃ、行ってくるヌ〜!!」

ガナッシュとマドレーヌに見送られながら、彼のクラスメートは再生の間へと足を運んだ。
これから何が起きるかは分からない。今の彼に出来るのは、ただ彼等を信じて待つ事だけだった。

「ねぇ、ガナッシュ……。」

ふと、マドレーヌが突然ガナッシュに声をかけた。

「グラン・ドラジェにもエニグマが憑いているのよ。知ってた?」
「え……?グラン・ドラジェにも…?」
「ケルレンドゥの前の王、ユゥヴェック。だからケルレンドゥは今まで魔法学校に手が出せなかったの。」
「……。そうだったんだ……。先生にはどんなエニグマが憑いているんですか?」
「フフッ……。どんなエニグマだと思う?」

to be continued……

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