マジバケ小説 | ナノ


マドレーヌの言葉を聞いた途端、ガナッシュは目を見開いたまま振り向いた。
そこには、決して来ないと思っていたミエルが立っていた。来るはずなんてない、けど心の何処かで来るのを望んでいた少女が目の前にいたのだ。
クラスメートに見守られる中、最初に声を出したのはカシスだった。

「融合するならしてもいいぜ。マドレーヌ先生にだってエニグマが憑いてるって?
今まで、ただのボンヤリした先生だとしか思ってなかったのにさ。はっきり言って悔しいよ。
その上、お前までエニグマと融合するって?強くなりたいだって?
ふざけんなよ!!強さってなんだよ!!ぶつかり合って、潰し合うだけじゃねぇのかよ!!」

父親を亡くし、かつては荒れていたカシス。
だが、自分の人生を楽しむべき事を知り、吹っ切れ、多少はチャラチャラしてるける頼れる先輩のような彼が心から出す精一杯の言葉だった。


「ガナッシュ、帰ろう。ガナッシュも、もうすぐ私やキャンディみたいに、何でもわかるようになるよ。
そうすれば、もっと色んなことが見えるようになるよ。
闇のプレーンにも、死のプレーンにも、敵がいっぱいいたけど……もとの世界には敵なんか一人もいないのよ。
何かがくるっているだけ……。
ジグソーパズルのピースがぐちゃぐちゃに置いてあるだけで……最後にはちゃんと1枚の絵になるのよ……。
もうすぐ見えるの。どんな絵になるか、もうすぐ分かるのよ。」
「世界がキミの敵になるなら世界なんかブチ壊してやる。俺の兄キがヴァニラに言った最後の言葉ヌ〜。
俺の気持ちも同じヌ〜。ガナッシュがエニグマ憑きになっても、俺はガナッシュの親友だヌ〜。
もし、そんな俺が目障りなら、いつでも踏みつぶしても構わないヌ〜!
俺はいつまでもガナッシュの側にいるヌ〜!」

自分を誰よりも理解し、側にいてくれた存在。その2人は今も自分を責めようとはせず、彼に優しく語りかけている。

「先生の言ったことを繰り返すよ。君は君自身になるんだ。
君が正しいと思った道を選べばいい。誰が決めた道でもない。君が決める道さ。
ねぇガナッシュ、天国のドアを開こうよ。天国のドアを開けるのは、誰の手でもない、自分の手さ。」

「帰ろう、ガナッシュ。あなたの姉さんは、私がなんとかするよ。」
「何だって!?」
「!!!!!」

キャンディの言葉にガナッシュはもちろん、側にいたオリーブも驚いた。

「これから起きること、すべて見えるの。貴方はエニグマとは融合しないわ。
皆で学校へ帰って、2人でシブストの城……貴方の姉さんが捕まってる城へ向かって……。
それから……何もかも分かるのよ!」
「キャンディ……」

次々と自分に語り掛ける言葉に少しずつ心を動かすガナッシュ。そんな彼に向って、最後の1人が声をかけた。

「ガナッシュ…」

その言葉にガナッシュは目を見開いた。その声がその言葉を語ったのはどれくらい前だろうか。
そんな事を思いながらガナッシュはその声がした方へ振り向いた。

「私も、強くなりたかった。強くなれば、もう誰も私の事傷つけられないんだって、亡くなったお父さんの復讐が出来るって、ずっとそう思ってた。
でも、間違ってた。私はただ、自分の気持ちを正当化しようとしただけで、ちゃんと過去と向き合おうとしなかった。
今まで旅をして、色々な事があったし、時には喧嘩もしたけど、お互い助け合ってるうちに、私は1人じゃない事に、皆が側にいることに気づいた。
それで分かったの。強くなることは誰かを傷つける事じゃない。誰かを助ける事だって。
それに気付かせたのは貴方だから、嫌な事だけだったし、話が出来たのもほんの少しの間だったけど、それでもずっと一緒だったあなたを、こんな形で失いたくない。
前は貴方を殺したかったけど、今は貴方を助けたい。貴方と貴方のお姉さんを救いたい!

貴方は私の……大切な友達だから!」

 
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