マジバケ小説 | ナノ


洞窟を進んでいる内に、風景は白く輝く岩の壁と床から生物の臓器の様な風景となっていた。
その悍しい風景にキャンディは思わず体をビクつかせ、シードルは汚物を見るかの様に顔を歪めた。
だが、いくら見るだけでもゾッとする風景でも、進まなければならない。そんな思いに急かされ、ミエル達は足を運んだ。
進めば進むほど、周囲を圧迫する様な気配が強くなっていく。恐らく、ガナッシュがいる所もそう遠くはないのだろう。
奥まで進む内に、ようやく最下層まで辿り着いた。その奥には入口らしき物があり、そこから幾度もなく強い闇を感じる。ミエル達がその中へ入ろうとした時だった。

「ちょっと待って、皆!」

いつから付いて来ていたのか、マドレーヌがミエル達を呼び止めた。

「先生!」
「先生も来たのかヌ〜?」
「先生まで、こんな地の底に来なくてもいいのに……。」
「私は皆の担任よ。皆の最後の戦いを見て置かないとね。」

最後の戦い。おそらく、この奥にガナッシュが居るのだろう。既に予想はしていたが、マドレーヌの言葉でそれは確信となった。

「五感を研ぎ澄まして、軽く目を閉じるだけで…この世界全てが見渡せる。これが魔法の極意。
今日の空気を忘れないで。あなた達にも、やがて見えるようになるわ」

ミエル達を見回しながらそう告げると、マドレーヌは先程ミエル達が入ろうとしていた入り口へと足を運んだ。

「先生…。ガナッシュを助けて……!!」
「先生って不思議な人だ…。全然魔法使いに見えない。」
「でも、先生って、何処で会っても先生だヌ〜。当たり前の事なのに不思議な感じがするヌ〜。」
「先生って、何でも見えてるんだなぁ……。この先に、ガナッシュがいるって解ってるんだ、きっと。」

いつの間にか姿が見えなくなった先生をただ見つめてる生徒達は、ほぼ毎日見ている筈のマドレーヌが、今でも不思議に感じた。
ボーッとはしているが、それと同時に自分たちとは比べ物にならない程の経験を積み重ねてきたのも事実だ。
けど、そんなマドレーヌだからこそ、生徒達は何となく安心感を感じるのかも知れない。

「はっ!!100点満点のバトルを見せてやるぜ!!」

いつもの様に自信満々な声で叫ぶカシスを始め、生徒達が中へ入って行こうとした時った。

「あの奥に…ガナッシュが。」

入り口の奥に、かつて一番憎い相手だったガナッシュがいる。
それを知った途端、ミエルの中から彼を助けたいと言う思いと、二度と立ち上がれないほどボロボロにしてしまいたいと言う思いが混じった感情が湧き出た。
全く正反対の感情に満ちたミエルの体は思う様に動かない。すると、突然カシスがミエルの頭にポンと手を載せた。

「そんな堅苦しい顔すんなよ。まずはガナッシュを助ける。その後は喧嘩するなり仲直りするなり好きにすれば良いさ。
第一、本当に融合すればお前に謝る相手だって居なくなるぜ?それでも良いのか?」
「……。」
「何なら文句の1つや2つは言ってやれよ。ここまで苦労して来たのに融合するなんて言われたらムカつくだろう?」

カシスが宥める様に説得しても、ミエルの気持ちは中々晴れなかった。
頭では助けたいと思っても、それを心が許そうとしない。中途半端な気持ちでガナッシュに会うのは流石に気が進まないようだ。

「……私、ちょっとここで気持ちの整理してる。」
「…そっか。まあ、遅れるなよ。」

ミエルにその言葉だけを残し、カシス達は先に入り口へと入って行った。今はただ本人の意思に任せるしかないだろう。

今までよりもずっと暗い道の奥には、先程入り口へと入っていたマドレーヌがいて、さらに奥にはガナッシュが巨大なエニグマと共にいた。

「ようやく来たか……。」

大きな球体のエニグマ、ケルレンドゥらしき存在が自分に向かってるガナッシュに静かに語った。

「お前がケルレンドゥか?」
「直前の生ではケルレンドゥとして生きた……だが、今はケルレンドゥではない…。」
「エニグマなのか…?」
「フフフ……エニグマも私の一つの写し身に過ぎぬ……私は幾度も再生する…。」
「幾度も……? 何の為に……?」
「フッフッフ…愚問…それが命だからだ。お前は何のために生きていると言うのだ?」

エニグマの問いに、ガナッシュは迷いも無く答えた。

「俺は……腐った世界から…姉を助け出すために…。」
「くっくっく…何かをやり遂げるには二つのものが必要だ。それは、力と、意志。私には力がある…オマエには意志がある…。宿主よ…我が力を宿せ…。」
「力……?」

目の前にいるある力。自分の姉をすくうために必要な力。そんな巨大な力に惹かれるかの様にガナッシュはゆっくりとケルレンドゥへと近寄った。

 
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