マジバケ小説 | ナノ


全ての存在が生まれ変わる場所、モギナス洞窟。死の恐怖、誕生のときめきの2つの気配を満たしている洞窟の中を、まだ10代の子供達が歩いていた。
彼等がいる洞窟のずっと奥には、これから生まれ変わろうとするエニグマ、ケルレンドゥがいる。
そして、そのケルレンドゥがいる所には彼等のクラスメートのガナッシュがいる。
ガナッシュは、姉のヴァニラを助けるためにエニグマと融合しようとしている。
だが、もし融合すればガナッシュは自分を失い、世界に恐怖を与える化け物となるだろう。
そうなる前に彼等、ミエル達はガナッシュがいる奥の方へと進んで行った。

「もうすぐガナッシュに会える筈だヌ〜!気合い入れて行くヌ〜!」
「解ってるよ言われなくても。つーかこんな陰気臭い所にいるのに元気だなぁお前は。」
「当たり前だヌ〜!落ち込んでばかりなんかいられないヌ〜!とにかく進んで進んで進みまくるヌ〜!」

ガナッシュを探す事に一番積極的なのは親友のカベルネ。
普段とは違って張り切る彼を見ると、洞窟の中の重い空気も和らぐ様だった。

「じゃあ、競争しようぜ。一番最初にガナッシュに辿り着いた奴の勝ちな。」
「あ!ズルイヌ〜!待つヌ〜!」

話を終えると同時に走り出すカシスに驚き、カベルネもその後を付いた。

「ちょっと、待ちなさいよ!ガナッシュに先に会うのは私なんだから!!」

いつの間にかキャンディも掛けっこ競争に加わり、3人はどんどん遠くへと行ってしまった。
先程まで6人が居たその場所には3人しか居らず、その3人はいつの間にか見えなくなった3人をただ見てるだけだった。

「はぁ。皆バカだな。今何しに行ってるのかちゃんと解ってるのかな?」
「あはは…」

これから、今までとは比べ物にならない程強い敵に会うと言うのに、あの3人からは緊張感が全く感じられない。
まぁ、恐怖に怯えたまま何も出来ないでいるよりはマシと言えるだろう。

「何か不思議ね。さっきまでガナッシュの事憎んでたのに、今は彼を探しに行くなんて。」
「…やっぱりイヤだった?」
「……ううん、そんな事ない。ただ…彼を見た時、私はどんな顔になるのかな…?」

今更ガナッシュに会いに行くのを後悔してはいない。ただ、心の奥にはまだガナッシュへの憎しみが残っている。
その状態でガナッシュに会った時、自分は笑顔でいられるのか。ミエルはそれが不安だった。

「大丈夫だよ。」

そんな彼女を元気付けるかのようにオリーブが声を掛けた。

「ゆっくりでいいんだよ。許すのも、仲直りするのも、少しずつ話し合いながらゆっくりやればいい。」

「焦る必要なんて無いのよ。」

一瞬、オリーブの声が別の声と重なった。今までミエルを支えてくれた優しい女性の声と。

「……。」
「ミエル?」
「…そうね。焦らなくていい。まだ時間はたっぷりあるから。」

胸元に両手を当てながらミエルはそう囁いた。
そうやって先へ進んでると、走ってる途中で転んでしまったのか、1つの塔になっているキャンディ達の姿がそこにいたのだった。

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