マジバケ小説 | ナノ


突然、ミエルの目から涙が流れ落ちた。最初は一粒、二粒だったが、やがて止まる事なく流れ続けていた。

「お、おい。どうしたんだんだよ!?何か変な事言ったのか、俺達?」

慌てて聞くカシスの問いにミエルは首を横に振った。

「んーん。違うの。私…嬉しくて。今まで…誰も信じてくれなかったから…。助けて……くれなかったから…。」
「…ミエル。」
「私、何を恐れていたんだろう?ただ普通に話せばよかったのに…そうすれば、もっと早く気持ちが楽になってたのに…。」

涙声で語りながらミエルは涙を拭ったが、なかなか止まろうとせず、むしろ余計に溢れ出していた。

「…大丈夫だよ。もう1人なんかじゃないよ。」
「チビちゃん…。」
「ミエルには、皆がいるよ。」

オリーブの言葉を聞いた瞬間、ミエルは思わず大声で泣き出した。今まで心に秘めていた恐怖と悲しみから、ようやく解放されたのだった。

「……止めに行かなきゃ…。」
「え?」
「…ナイトホークを……ガナッシュを止めに行かなきゃ。私…ガナッシュになんて事したんだろう…。
ガナッシュもお姉さんの事で苦しかった筈なのに、私、ガナッシュの事…追い詰めちゃった。」
「…本当に良いのか?お前を虐めた奴じゃないのか。」
「今は、そんな事どうでもいい。放って置いたらガナッシュは二度と戻れなくなる。でも、それじゃあ皆がここまで来た意味が無くなる。」
「まぁ、確かにそうだな。無事連れ戻したら思う存分ぶん殴ってやんな。俺が支えてやるからさ。」
「カシスちゃん!暴力はダメですの!」

あまりにも場に合わない、でもいつも通りのクラスメートの雰囲気にほぼ全員が笑い出しだ。

「…とりあえず、キャンディとカベルネ君。それから、チビちゃんには来て欲しいの。
この3人はずっとガナッシュと一緒だったし、一番ガナッシュの事を理解してるから。」
「勿論だヌ~。言われなくても行くつもりだったヌ~。」
「そうね。それに、私はミエルのサポートも出来るしね。」
「…え??」
「だって、魔法は使えなくても、精霊を呼ぶ事は出来るでしょ?私にも教えてよ。そしたらきっとミエルの役に立つでしょ?」
「キャンディ。」

流石にこれは予想外の発言だったが、それを聞いてミエルも微笑んだ。

「じゃあ、俺も行こうかな?どっかのオッサンの目を覚まして、さっさと帰ろうぜ。」
「僕も行くよ。威力は大した事ないと思うけど、僕も皆のサポート位は出来るから。役に立てるかは解らないけど。」
「んーん。来てくれて嬉しい。シードルがいると、何となく落ち着くから。」
「酷いなぁ。俺は何ともないわけ?」

不満そうな顔をするカシス。だが、これでガナッシュを探しに行くメンバーが全員決まった。

「トリュフは行かないヌ〜?ミエルが行くのにヌ〜?」
「…いや、俺はいい。もう1人でも大丈夫だろう。あいつの事、頼む。」
「大丈夫だよ。ちゃんと皆で帰るから、首でも洗って待ってなさいよ。」
「…お前のそのうるさい声でも待っててやるよ。」
「何よその言い方!酷くない!?」

言い方は完全にバカにした様だが、彼もそれなりに彼等を心配しているんだろう。
クラスメートの見送りの言葉を聞きながら、ミエル達はバスから出て行った。

最後のクラスメート、ガナッシュを連れ戻すために。

to be continued……

 次
(6/6)
戻る
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -