マジバケ小説 | ナノ


「この洞窟に残ってる生まれたての星は……僕で最後。さて、僕も天に昇るか……。」

最後の星が天に昇ると同時に、大きな何かがゆっくりと降りてきた。闇の精霊ニルヴァに似ているが、ニルヴァより大きく、赤みを帯びている。恐らく、これが闇の大精霊、ブラックカラントなのだろう。

「光は闇の中にあり、闇は光の中にある。エニグマは闇。お前達は光。光と闇は、やがて一つになる。」

威厳のある声が空に響くと、夜空をそのままヴェールにした様な物がフワリと降りてきた。これが闇のヴェールなのだろう。ヴェールを貰ったし、後はこれを使って死の回廊へ行けばいいだけ。用を済まし、ラキューオから出て行こうとした時だった。

「小娘。」

ふと、先程の威厳のある声がミエルの頭から聞こえ、ミエルはブラックカラントのいる所へ振り向いた。
ブラックカラントは、まるで来いと言ってるかのように自分を見つめていて、ミエルはゆっくり彼のいる所に近づいた。

「お前に言いたい言葉がある。とある者がお前に伝えて欲しいと言い残した言葉だ。」

そう言うと、ブラックカラントは静かに、その言葉を告げた。
ミエルにしか聞こえない様に、静かに、そして優しく。

「……。」
「その者は、最後までお前を見守っていた。天に昇ってからもずっと。」
「…そう、みたいね。」
「どんな事があろうと、光を見失うな。お前を守り続けたその光を。」
「光?」

言葉を繰り返した途端、とある光景が頭に浮かんだ。真っ暗な空から小さな白い光が、まだ小さかった自分に近づいていた。その光は、やがて1つの物体となっていた。ぼんやりとしか見えないその物体は…。

しばらくすると、目の前には再びブラックカラントがいた。身が少しずつ透けていく闇の大精霊が。

「さあ、行くが良い。お前はもう、お前のなすべき事が何なのか解ってるはずだ。」

そういい残すと、ブラックカラントの姿はもう何処にもいなかった。ただ、この言葉だけが、夜空に響いていた。

「光を生み出したのは私だ。同時に、私は光によって生み出された。」

闇のヴェールを持ってラキューオから出て来たミエル達は早速死の回廊へ向かおうとしていた。

「よし、これでキャンディの所へ行けるぞ!」
「さっさとガナッシュ達を見つけて、連れて帰るヌ〜!」
「…待て。」

今すぐにでも死の回廊へ走ろうとしたキルシュとカベルネをトリュフが止めた。その表情はいつもの無表情だが、その中には迷いが見られた。

「いったんバスに戻るぞ。」
「はぁ!?何でだよ!?もうすぐキャンディ達に会えるんだぜ!!」
「だからこそだ。まずバスに戻って、パーティーメンバーを変えよう。死の回廊に行くのはその後だ。」
「どうしてヌ〜!それじゃあ、時間の無駄だヌ〜!」
「忘れたのか?キャンディの事。」

キルシュとカベルネとは違って冷静に話すトリュフの言葉に、ミエル達は一瞬黙り込んだ。
そう、後もう少しでキャンディに会える。それはつまり、キャンディに憑いたエニグマに会えるという事だった。
ミエル達はトリュフの言葉に従い、バスに戻ることにした。

これから起きるかもしれない戦いに備えるために。

to be continued……

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