マジバケ小説 | ナノ


「カシス。」

ふと、後ろから声が聞こえて振り向くと、いつの間にいたのかキャンディが立っていた。

「そんな風に聞いたら、言いたくなる筈ないでしょ?女の子にはもっと優しくしなきゃ。」
「けど…!」

カシスが何か言い返そうとしたが、今のキャンディの表情を見ると、何故か言葉が出なかった。
キャンディは優しい、けどどこか悲しそうな表情をしながらミエルに近づくと、彼女の手をそっと握った。

「ミエル…。今まで、辛かったでしょ?ガナッシュの事も、その他の事も。」
「……。」
「私、全部知っちゃったの。あの時、エニグマがミエルに語った時、見えたの。
ミエルを苦しめてた過去の記憶が。」

キャンディの言葉を聴いてミエルは目をカッと見開いき、キャンディに握られた手が小刻みに震えた。
これ以上は聞くまいと自分の手を握ったキャンディの手を振り払おうとしたが、どうも上手くいかない。
トリュフも流石にこれはマズイと思ったのか、キャンディとミエルの間に割り込んだ。

「おい。人の神経を逆撫でする様な事…」
「そんなんじゃないの。私は別に、ミエルを脅すつもりなんてない。」
「……。」

まだ警戒を緩んではいなかったが、トリュフは口論しようとはしない。それを見てキャンディは再びミエルに優しく声を掛けた。

「怖がらなくてもいいの。私はただ、ミエルの気持ちを軽くしたいの。
ミエルが私の事、いつでも応援して、励ましてくれた様に、私も、ミエルの力になりたいの。」
「……っ…!!」
「だから、話してくれる?」

優しく響くキャンディの言葉に、ミエルは目を逸らした。俯いているその瞳は微かに揺れている。やがてミエルは溜息を吐くと、固く閉ざした口を開いた。

「皆を……呼んでくれる?」
「…いいのか?」
「もうこれ以上隠すのも辛いの。どうせいつかバレるなら、自分の口で言いたい。変に言い換えられて誤解される位なら、ちゃんと自分で話したいの。」
「…うん。解った。ちょっと待ってて。」

キャンディはほかの皆を呼びに行こうと魔バスへと走って行った。
キャンディを待っている間も、ミエルの手は震えて、瞳も小刻みに揺れている。
そんな彼女を、トリュフはただ複雑そうに見ているしかなかった。

しばらくしてキャンディは、クラスメートを連れてミエル達の所へやってきた。
そのほとんどが心配そうな顔をしている。

「…皆にちゃんと打ち上げようと思うの。私とあいつが喧嘩した理由。私があいつの事を憎んでる理由を。」

話をしている間、ミエルの体は震えていた。生き場所が見つからない両手はお互いを握りしめあってる。
小刻みに震えてるその両手を、キャンディがそっと包んだ。手を包み込んだまま、何も言わずただ優しく見つめてるキャンディを見て、ミエルもようやく決心が付いた様だ。

「まずは、皆に見て欲しい物があるの。」

そう言ってミエルは皆のいる所から少し離れ、空を見つめた。

 
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