マジバケ小説 | ナノ


キャンディを飲み込んだエキウロクリュは部下のエニグマを呼び、自分も後衛で攻撃の態勢に入った。
部下のエニグマの1体がニルヴァを呼び、残りの2体が魔法を放とうとしたが、その前にペシュが愛の魔法でニルヴァを帰らせたおかげで魔法の力が倍になる事だけは避けられた。
他の精霊達がニルヴァに打ち消される前に魔法を放てるよう、ミエルが全員のスピードをあげ、レモンがエニグマを痺らせたのを隙にカシスが刃の魔法で攻撃を加えた。
痺れが切れたと思ったら、アランシアが音の魔法で眠らせ、カベルネの毒の魔法とミエルの風の魔法がエニグマへと放たれて行く。
だが、これまで何度も戦ってきたが、相手もかなりの腕を持っていて、そこから来るダメージも侮れないものだった。
互いが傷付き、周囲が魔法によって壊されたり、揺れたりする。
そんな痛ましい光景は、どんなに時間が経っても終わりそうに無かった。

3体のエニグマが倒されても、まだエキウロクリュが倒されてない。
かつて王であったケルレンドゥを倒しただけの事あってその力はかなりのものだ。
あげくに、部下のエニグマを倒すのに力を使いすぎたせいで魔力も体力もあまり残っていない。

「どうした?もう降参か?だったらこっちから行くぞ!!」

エキウロクリュが地面を叩くと、突然地面が大きく揺れだし、大きな溝が出来た。
何とかそれを避けるも、それだけで終わりではない。
いつの間にかエキウロクリュが近くまで来ると、腕が彼らを襲い掛かって来た。

「くっ……これじゃあ埒が明かねぇ。」
「でも、このままじゃあキャンディが……」

もうほとんどの魔法を使ってしまったせいでまともに対当する事が出来ない。
だが、このまま避けてばかりいては、取り憑かれたキャンディの意識が無くなるのも時間の問題だ。

「キャンディ!!聞こえてるんでしょ!?返事をして!!」
「!!おい!!無闇にそいつに近づくな!!」
「だからってキャンディを放って置く訳には行かないでしょ!?」

いきなりミエルがエキウロクリュに近づきながら叫びだし、カシスが止めてもミエルはさらに近づこうとしていた。
だが、ミエル達に届いた声はキャンディでは無く、別の者の声だった。

「ふん!キャンディだと!?あんな者もう居らん!あんな虫けらなどもう何処にも居らんわ!!」

あざ笑うかのような声で語るエキウロクリュ。それを聞いたとたん、ミエルの顔がゆがんで行った、

「虫けら…?」

親友を虫けら呼ばわりされた少女の顔は怒りでどんどん歪んで行く。ミエルは自分を掴んでいたカシスを叩き落し、強い風を引き起こしていた。

「キャンディを…キャンディをそんな風に呼ばないで!!」

完全に怒りで我を失ってるように見えるミエルは、エキウロクリュに向かって風の魔法を放った。
それに当たって一度はぐらついているように見えるエキウロクリュだったが、やがて姿勢を保ち、余裕そうな笑みを見せた。

「虫けらを虫けらと呼んで何が悪い!?」
「キャンディは虫けらなんかじゃない!!キャンディは私の…私の大切な親友よ!!」
「はっ!親友だと?あの男に心を奪われたこいつがか!?」
「っ…!!」
「本当は憎いんだろう?お前を酷い目に合わせ、挙句にお前の大切な人を奪ったあの男を好きになったこの女を!!憎くて憎くて、今すぐにでも殺したい位なんだろう!?」
「…うるさい。うるさい、うるさい!!」

エア達が現れ、作り出された風は大きな竜巻へと変わって行った。

「確かに私はあいつの事が憎い。顔も見たくないし、殺したいとも思う。けど、それがキャンディと何の関係だって言うの!?
私は、私があいつの事が憎いから、キャンディもあいつの事好きになっちゃいけないって思った事なんか無い!!
キャンディが誰を好きになろうが、私はキャンディを応援する!!
キャンディは私と…初めて友達になってくれた、大切な親友だから!
そんなキャンディを、私の前で侮辱しないで!!」

大きな岩さえ持ち上げられそうな暴風が、エキウロクリュに向かって吹きすさぶっていく。
強すぎる風に中心を失ったエキウロクリュは、風の刃に切裂かれながら吹き飛ばされ、やがて大きな音を立てながら地面へ倒れた。

 
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