マジバケ小説 | ナノ


クラインが叫ぶと同時に低い声でほえるツボゴーレムからは黒いオーラが出ていた。
あのオーラから見ると、ツボゴーレムは闇属性のようだ。
トリュフはミエルを後ろに立たせ、キルシュとカベルネと共に前衛に立った。

「さっさと片付けて戻るぞ。」
「言われなくてもそのつもりヌ〜。カイエンヌ!!」

カベルネがツボゴーレムに向けて毒の魔法を放つと、ツボゴーレムは低い悲鳴声を上げた。
が、それもほんの一瞬。相手が闇属性であるだけの事あってそんなに大きなダメージにはならなかったようだ。
突然、ツボゴーレムがちょうど6人の上の方へ飛び上がった。あんなドデカイ胴体が落ちてきたら紛れも無くぺしゃんこになってしまう。

「させないよ。イエローローズ!!」

パウダーを2体呼んだシードルが魔法を唱えると太い茨がツボゴーレムを拘束し、動けなくなったツボゴーレムは唸りながらその茨を解こうとしていた。
その隙にカベルネがカイエンヌを、オリーブがサイのちからを放てながらツボゴーレムの体力を落として行った。
すると、ツボゴーレムの蓋がパカッと開き、緑色の目玉が出てきた。
その目玉が一度瞬きをするとそこを中心に光が集まり、圧倒的な力を感じるレーザーが発射した。

「うわっ!?」
「び、びっくりしたヌ〜!」
「お…お兄ちゃん!?大丈夫?」

間一髪で避けられたキルシュとカベルネだったが、トリュフはレーザーに肩が当たったらしく、苦しそうにその肩を押さえている。
ミエルが心配そうにトリュフを見つめたが、やがてその顔は恐怖に満ちた顔になった。
目の前にいるトリュフから、ツボゴーレムとは比べ物にならない程の強いオーラが出ていたからだ。

「面倒事に巻き込ませやがって……。」
「お…おーい、大丈夫か?」
「お兄ちゃん?」

周りの声を気にせずトリュフが立ち上がると、鋭い目付きでツボゴーレムを睨みながら指を鳴らした。

「俺を怒らせた以上、多少の覚悟はするんだな。」

そう言った途端、トリュフはツボゴーレムに向かって突撃した。
ツボゴーレムもさすがにこれは予想しなかったのか、かなり慌てている。
そんなツボゴーレムに向けてトリュフは回し蹴りを決めた。だが、土で出来た壷の硬度は高く、ひびすら入ってない。
トリュフは舌打ちをすると、ポケットからライトボムをいくつか出し、それを全部ツボゴーレムに投げつけた。
闇属性のツボゴーレムの唯一の弱点である光属性の魔法が入ったボムに当たり、ツボゴーレムは先程より大きな悲鳴を上げた。
それを隙にトリュフは拳を入れたり、魔法を放ったりしている。
まるで弱い物虐めの様な光景にミエル達は手も足も出ず、その中でもオリーブはトリュフの無慈悲な行動にブルリと震えた。

「キルシュ!とどめだ!」
「え、俺!?」
「他に誰がやるってんだ!?さっさとやれ!!」

いきなりトリュフにとどめを刺せと言われ戸惑うキルシュだったが、すぐに冷静になり、トーストを呼んだ。

「ノヴァショット!!」

3体のトーストの加護を受けた炎の魔法は竜のような姿になり、ツボゴーレムを覆い、そして…

ドカァアアアン!!

大きな爆発音を立てながらツボゴーレムは小さな欠片となっていた。

「…終わった?」
「終わった…みたいだけど……。」
「怖かったヌ〜!ホラー映画みたいだったヌ〜!」
「倒せたからいいだろう。」
「あ…あはは。」

ツボゴーレムを倒せたのはいいが、先程の光景をただ見ていたミエル達は思わず苦笑した。
だが、それもほんの一瞬。ミエル達は粉々になってるツボゴーレムを未だにポカンと見てるクラインを見つめた。

「てめぇ!!いきなり何しやがるんだ!!」
「あんな目に会わせて、よくそんな顔でいられるな!!」
「全く!冗談じゃないヌ〜!!」
「シャレになってないよ!ほんとに!」
「なんなのよ!ほんとに!」

空間が捻じ曲げられて邪魔された挙句、命がけの戦いまでやらされた。
次々と非難をする中クラインはただ静かに「すまぬ。」と言った。
それを聞いてますます怒りが上がっていく。

「謝って済むかよ!!こっちは命懸けだったんだ!!」
「それで許せと言うのか!?」
「許せるわけないヌ〜!!」
「もういいよ、行こうよ。」
「ふんっ!」

さらに来る非難にクラインは落ち込んだ顔になると、こう呟いた。

「割ってくれ。」
「……!?」
「人生に一辺の悔い無し!!割ってくれ!!」
「割ってくれと言われても……どうする……?割る…………?」

いくら許せなくても、いきなり割れと言われたらさすがにどうすればいいのか解らない。
キルシュはトリュフを見ながら聞いたが、トリュフはすでに決心をしてる様だ。

「当然だろう?割られるべき事をしたからな。」
「……え?」

驚いたように見つめるミエルを余所に、トリュフはゆっくりとクラインへ近づいた。

「こっちは急いでるっつーのに、邪魔された挙句に、死ぬ所だったからな。粉々にしないと、気がすまない。」
「ひ、ひぃぃぃ!?」

影が差したトリュフの顔を見てクラインは顔が真っ青になった。
髪の隙間から見える赤い瞳は、クラインの恐怖を更に増している。
トリュフはクラインを持ち上げると、腕をさらに高く上げ、やがて凄いスピードでクラインを振り落とそうとした。

「待って!!」

クラインがトリュフの手から離れる前に、ミエルがトリュフにしがみついた。

「お願い、割らないで!!」
「はぁ?あんな目に会わせて割るなって?」
「彼も別に、悪気があった訳じゃないから。許してあげて!!」
「……。」

腑に落ちないそうにトリュフは眉を顰めたが、やがてクラインをそっと下ろした。
クラインの顔はすでに涙でビショビショになってる。

「今回は見逃してやる。けど、次に同じ事をしたら、その時はただじゃ済まないからな。」
「あ、ありがとうございました!!失礼しまッす!!」

クラインはその場から逃げるように物凄い勢いで飛んで行った。

「ああ、びっくりした〜。本当に割るかと思ったよ〜。」
「お前が割るか割らないか聞いただろうが。」
「いや、そうだけどよ〜。」
「とにかく、これで2人を探しに行けるな。」
「そうだヌ〜!!早く行くヌ〜!!」
「よぉし、待ってろよぉ、キャンディ!!」

クラインが起こした捻じ曲げの事件が終わり、ミエル達は再びガナッシュ達を探しに行ったのだった。

to be continued……

 次
(5/5)
戻る
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -