マジバケ小説 | ナノ


ガナッシュとキャンディが岩から去って数分後、同じく死のプレーンへ向かった魔バスがようやく着いた。
バスの胴体が砂地に着いたとたん、マドレーヌが欠伸をした。

「ふぁぁぁ……ごめんなさい……先生、ちょっとだけ横になるね……。」

そう言ってマドレーヌは座席の上ですやすやと眠り始めた。

「先生!? どうかしましたの!? 大丈夫ですの!?」
「疲れてるんだよ。そっとしてやりな。」
「1人で闇のプレーンを走り回ってたからね。しばらくは、僕等だけでやってみようよ。」
「キャンディとガナッシュを探しに行くヌ〜。」
「よぉっし、それじゃあ掴まれ。今から猛ダッシュで行くからなぁ!!」

バルサミコがハンドルを掴み、エンジンを起動すると、バスはブォォオンと物凄い音を出した。
だが、ただ音が凄いだけで前に進もうとしない。もう一度エンジンを起動しても同じ事が繰り返すだけだった。

「おいおい、どうした!?何故動かないんだ!?」

顔が赤くなって行くバルサミコを余所に、トリュフは窓を開け、辺りを見回していた。

「駄目だなこりゃ。タイヤが砂に埋まってる。これじゃあ、バスを動かすのは無理だな。」
「歩かなきゃ駄目って事か…。」
「せっかく魔バスも直したのに…これじゃあ何の意味無いじゃな〜い。」

魔バスを直し闇のプレーンに来たのに、また別のプレーンに行かなきゃいけない。
そして、そのプレーンに着いたと思えば、今度はバスを動かせない。
次々とやって来る不条理に不満を語るクラスメートだったが、いつまでもバスで待機してる訳にはいかない。

「こうしてる間も、キャンディが遠くに行ってるかも知れないだろう!?さっさと行こうぜ!!」

キャンディの事で頭がいっぱいなキルシュが立ち上がった。そんな彼を、アランシアは複雑そうに見ている。

「俺も行くヌ〜。ガナッシュとキャンディを説得して、皆で帰るヌ〜!!」
「私も…。」

ずっとガナッシュ達と一緒だったカベルネとオリーブもパーティに加わった。
オリーブはミエルに視線を向けたが、帰ってきたのは冷たい視線だった。

「……私は行かない。」

そう静かに告げると、ミエルは窓の方へ振り向いた。

「…ミエルちゃん。このままだとガナッシュちゃん。本当に融合するかも知れませんの。」
「言ったよね?あいつが融合しようが、私にはどうでも良いって。
探しに行くのは止めない。だから、私をこの事には関わらせないで。」
「……。」

最後まで行かないと言い張るミエル。そんな彼女を見てカシスは苛立ったのか、再びミエルを問い詰めようとした。
が、その瞬間、目の前に大きな岩の塊が現れた。その岩の塊、マッドマンのショコラは、突然ミエルの体を持ち上げた。

「うわああ!?!?何するの!?降ろして!!」
「ミエルー、ガナッシュのところー行くー!!」
「行かないって言ってるでしょ!?降ろして!!」
「ミエルとガナッシュー、仲直りするー!!けんかーだーめー!!」

のんびりしてる、けど説教してるような口調で語るショコラを見て、眉を顰めてるミエルの顔は真っ赤になった。
しばらくしてショコラはようやくミエルを降ろしが、ミエルは未だに眉を顰めている。
そんな彼女に、シードルが優しく声を掛けた。

「ミエル。君とガナッシュの間に何があったのか僕等は解らないから何とも言えないけど、せめてキャンディだけでも探しに行こうよ。」
「……。」
「ガナッシュはどうでもいいかも知れないけど、キャンディはそうじゃないでしょ?」
「……。」

ミエルは何も言わなかったが、その目は少し迷っていた。
キャンディは彼女の親友だから、探しに行きたい思いは山ほどだった。
だけど、キャンディがいる場所にはガナッシュもいる。結局彼も探しに行くことになるではないか?
仮に彼がいなかったとしてもキャンディには今エニグマが憑いている。
そんな彼女をどうやって元に戻し、連れてくることが出来るのだろうか?

「…解った。私も行く。」

今はキャンディを探すことだけを考えて、他の事は後で考えよう。そう結論を出し、ミエルもパーティに加わった。

「なら、俺も行く。」
「何でトリュフもヌ〜?」
「文句あるか?」
「…ありませんヌ〜。」

妹のミエルが行くなら兄である自分も行くとパーティに加わったトリュフ。
だが、トリュフもガナッシュとは仲が悪いため、そんな彼が一緒に来るのがカベルネは少々腑に落ちないようだ。

「僕も行くよ。」
「……シードル?」

シードルがパーティに入ると、ミエルは意外そうに目を大きく見開いた。

「2人を探しに行くためもだけど、君にも聞きたい事がいろいろあるからね。」

以前2人の間で起きた喧嘩の理由。他にもいろいろな事をガナッシュとキャンディを探す間に全部聞きだすつもりだ。
それを聞いたミエルは複雑な顔をしたが、彼を止めようとはしなかった。

「それじゃあ、オイラ達はここで待ってるっぴ!!」
「いーってーらー……」
「ちゃんと皆で帰ってきますの!!」

バスに残ったクラスメートが6人を見送っていた。
ショコラの言葉は、他のクラスメートの言葉に掻き消されてしまったのだが。

 
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