マジバケ小説 | ナノ


昼なのか夜なのか区別がつかない灰色の空。
生き物など1匹もおらず、草も木も枯れていて、そこら中が砂地。まさに死のプレーンと名乗るだけの事はあった。
そこにぽつんと置かれてある大きな岩。キャンディとガナッシュはそこに立っていた。

「このプレーンの何処かに最強ののエニグマ…ケルレンドゥがいるわ。そいつと融合しちゃえば、あなたの夢も叶うって事ね。」
「キャンディ…俺の目的を知ってるのか?」
「知ってるわ。お姉さんを助けるんでしょ? エニグマと融合して、自分の意識を失ってしまった、可哀想なお姉さんを。」
「オリーブに聞いたのか?」

オリーブと言う言葉を聞いた瞬間、キャンディは眉を顰めたまま振り向いた。
彼女の嫌いな人を愛する人が語るのは不愉快だったようだ。

「あなたのお姉さん、お城の中に囚われてるんですって?それを助けるのに、エニグマの力が必要なんですって?」
「本当に姉にエニグマが憑いてたりしたら…俺が…。」
「え??」
「姉のことは、俺が自分の手でケリを付けてやる。どういうことか解るだろ?それでも俺に最後まで付いてくるつもりかい?」

実の姉を討つ事。それがどれ程許されない罪なのか、エニグマが憑いたキャンディも解っていた。
だが、キャンディは迷う事無くガナッシュを見つめた。

「………付いて行くわよ……決めたんだもん…。」
「もし俺が、最強のエニグマと融合してしまったら………俺は何をしでかすのか、自分でも解らない……。」

覚悟はしてるが、同時にそれが恐ろしかった。姉を助ける目的さえ失う可能性もある。そう考えると、恐怖と不安が自分を襲いかかった。

「あなたは自分で思ってるほど悪い人じゃないわ!
例えエニグマと融合しても、あなたは自分を失ったりしない! 信じてるから付いて行くのよ!」
「……もしかして…、君は自分の身に何が起きてるか気付いていないの?」
「え……??なぁに……??私が変わったってこと??
オリーブが言ってたみたいに、私が変だって思ってるの??」
「……。」
「酷いよ……私のこと何も知らないくせにッ!
今まで、私の気持ちをずっと踏みにじってきたあなたがどうしてそんなこと言えるの!?
やっと自分の思いに素直になれたのに、前のまま何も出来ない私に戻れって言うの!?」

確かに、キャンディについて深くは知らない事は否定できない。
だが、普段の彼女と違う雰囲気を出す彼女を見ると、あの時と同じように感じ、キャンディが変わったと思わざるを得なかった。

「姉の時もそうだった…姉はあの時まだ、エニグマと融合してしまった事を、知らなかった。」

キャンプから帰ってきた姉のヴァニラも、エニグマが憑いた事に気が付かなかったが、様子が可笑しかった。

「普段はいつも通り、何も変わった様子はなく、時折、些細なきっかけで理性を失い、声を荒げる。
感情の揺らぎは大きく、泣けば、そこら中の物を壊して回り、笑えば、誰にでも抱きついてキスをする。
そして、ある日突然いなくなった。姉を救えなかったのは、俺のせいかもしれない…。」

家族が変わったと感じながら何も出来なった自分のせいで姉は助からなかったのかもしれない。
あの時、ちゃんと変わった姉と向き合っていたら救えたかもしれない。
普段は見せない弱弱しい彼を見たキャンディは静まり、彼に背を向けたまま、震える声で呟いた。

「ごめんね、ガナッシュ……もう泣かないから…私を嫌いにならないで…あなたと行くって決めたの…。」
「……行こうキャンディ。一緒に。地の底までも。」

ガナッシュが岩から降りると、キャンディも彼を追って岩から降りて行った。
前へ進む間、ガナッシュは水色の首飾りを取り出した。灰色の風景の中でも、それは綺麗に光っている。
目を伏せたガナッシュはその首飾りを見ながら呟いた。

「ミエル……ごめんな。」

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