マジバケ小説 | ナノ


ショコラ、カベルネ、オリーブが戻って来て15人となったクラスメートは、魔バスの中で話をしていた。

「最初は多分、俺達を助けたいと思ってたんだヌ〜。」
「そうかもしれないね。それがあいつらしいね。」
「それがどうしてエニグマと融合なんて話になったんですの!?」
「グラン・ドラジェが倒したモンスターの話、知ってるヌ〜?」
「……聞いたことはあるけど、何処まで本当だか…。」
「そいつが、城を三つ壊したのも、兵士が200人以上死んだのも、全部本当らしいヌ〜。俺の兄貴もそいつと戦って、その怪我のせいで…。」

シャルドネは一年前戦争で亡くなった。
世間では事故として知らされたが、実際はモンスターと戦って死んだのだった。

「まさか、そいつってエニグマ?」
「間違いないヌ〜。そう考えると、ガナッシュがエニグマに会おうとしてるわけも分かるヌ〜。」
「だから、それがどうしたのさ〜。もう倒しちゃったんだろ?グラン・ドラジェが〜!終わった話だよ。」
「最後まで聞け。聞いて損になる事は無いだろう。」

面倒そうに語るシードルをトリュフが黙らせると、カベルネは話を続けた。

「そのエニグマって、恐らく…ガナッシュの姉貴ヌ〜。」
「ウゲ……。」

キルシュが突然顔を歪んだ。まさか例の魔物がクラスメートの姉だったとは。
そんな彼の気持ちを知るか知らずか、アランシアがカベルネに聞いた。

「ガナッシュのお姉さんって、臨海学校から戻ってすぐ…3年前だったっけ〜?一人旅に出るとか言って居なくなったんだよね〜……?」
「ガナッシュの姉貴が、そのエニグマだってなんでわかるんだよ。」
「俺の兄貴…骨を…シブスト城の見える場所に…そう言い残して息を引き取ったらしいヌ〜…。」
「シブスト城…? グラン・ドラジェが戦った城?噂では、例の魔物は今でもそこに閉じ込められてると…。」
「そうか〜。自分を殺した魔物がいる城が見えるとこに、お骨を埋めて欲しいって、変だもんね〜。」
「でも、どうしてそれが機密になってんだ?」

確かに、いくら黒歴史を隠したいと言っても戦争などを事故と変えてまで隠そうとしてたのが何なのか今の会話だけでは解らない。

「魔法学校の成り立ちがエニグマの力によるものでしょ? グラン・ドラジェがエニグマに力をもらって、物質界に魔法をもたらしたの。
だから、魔法学校とエニグマがごたごたしてるのが世間に知れると、マズイんじゃない?」

誰も最初は信じなかったが、エニグマも昔は他の種族と友好的な関係を持っていて、かつてエニグマの王だった物がグラン・ドラジェに魔法を教えた。
だが、例えそうだとしてもエニグマを敵対してる現在その事実が知られれば、明らかに魔法学校側にデメリットが出来る。

「確かに、あの学校出身の有力者って多いもんな。」
「学費も高いし、グラン・ドラジェにとっては、金の成る木だっぴ。」
「どうして、もっと早く奴を引き止めなかったんだよ。」
「あいつ、最初はそんな気はなかったヌ〜。俺たちを助けるついでにちょっとだけエニグマのことを知りたいだけだったヌ〜。」

そして、それが姉を救う道になる可能性になると思い、その道へ進もうとした。

「キャンディはなんでついて行ったっぴ?」

ガナッシュにとって特別な存在でありたいというキャンディの思いは強かった。
だが、彼女自身がエニグマと融合する事を手伝おうとしてる事はさすがに納得が出来ない。
すると、今まで黙っていたオリーブが口を開いた。

「彼女……エニグマが憑いてるわ………。」
「エニグマが憑いてるっぴ――――っ!?」

ピスタチオだけじゃなく、クラスメイトのほぼ全員が驚きを隠せなかった。自分達の友達にエニグマが取り憑いたのなら、いずれ彼女は物質プレーンを襲う可能性が高い。
帰るつもりで旅立ったが、状況がここまで悪化するなんて誰が思ったのだろうか。

「そう言う事だったのか…。」

そう呟くと、カシスは今まで一度も会話に交わらなかったミエルを見つめた。彼女は眉を顰めたまま窓の外を見つめている。カシスの視線を感じると、ミエルの目も彼に向かった。

「……何?」
「お前、あの話。本気だったのか?」

ガナッシュがエニグマと融合しても構わない。嘘を吐くようには見えなかったが、あの言葉はさすがに信じられなかった。
ミエルは目を吊り上げ、やがて口を開いた。

「私が冗談を言ったと思ってるの?あんな風に言って『すみません冗談でした。』とでも言うと思ったの?」
「……何でだよ?何でなんだよ!?俺達、全員で帰るんじゃなかったのかよ!?」
「その全員にナイトホークが入ってるのは皆の方でしょ!?私はあいつと一緒に帰るつもりなんてこれっぽちも無い!!」
「何でそんな風になったんだよ!?お前等最初に会った時、あんなに仲良かったじゃねぇか!!」

カシスの言葉にミエルの眉がピクリと動いた。苛立ち、怒り、様々な感情がその顔に篭っていた。

「まだあの時の事気に留めてんのか?そもそも何が原因なんだよ!?そうなった理由っていったい何なんだよ!?」
「………。」

何も言わず、ただ目を逸らすミエルを見てカシスは苛立ち、ミエルの胸倉を掴んだ。

「言えよ!!言わなきゃ解んねぇだろ!?」
「………。」
「カシス。その位にしろ。」

トリュフがカシスからミエルを引き離したが、カシスは未だに納得がいかない様だ。

「お前もミエルに何か聞けよ!!双子なんだろう!?」
「聞く事は何も無い。それに、ここで無駄な時間を潰す訳にはいかないだろう?」
「何なんだよ一体!?訳解んねぇよ!」
「……。」

いつも軽そうなカシスだとは思えない程大きくて荒れた怒鳴り声に、バスにいた全員は何も言えなかった。
沈黙が続く中、陽気な声がその沈黙を破った。

「ふ〜〜〜!!改造完了!!これで死のプレーンへも行けるぞ!!センキュ〜!カフェオレ!」

マドレーヌだった。こんな緊迫した空気の中でも呑気に自分のやる事をやってるのを見ると、逆に尊敬する。

「ガガガガガガ………ピ―――――ッ!」
「先生!!カフェオレをどうしたのッ!?」
「大丈夫大丈夫。発声回路を外しただけよ。慣れればまた、喋れるようになるわ。」
「ガガガガガガ!!!!ガガガガガガ!!!ピ―――――ッ!」

何を話してるか解らない声でカフェオレは何かを訴えていたが、そんな彼を気にせずバルサミコがカフェオレをバスに繋いだ。

「よーし、それじゃあ、早速死のプレーンへしゅっぱ〜つ!」
『………。』
「お――――――。」

死のプレーンに行く恐怖を振り払いたかったのか、カシス達が作った緊迫な空気を払いたかったのか、ピスタチオはぼー読みで叫んだ。

「元気が無いぞ〜!! もう一回言ってみよ〜!!死のプレーンへ向けて〜しゅっぱ〜〜〜〜つ!」
「お―――――――。」
「それじゃあ、行くぜぃ!!死のプレーン!!みんな目をつむれ!!息を止めてぇッ!!そのまま一時間ッ!!」
「死ぬだろッ!!」

レモンがバルサミコを蹴った。確かに、一時間も息を止めたらバスが着く前に死のプレーンに辿り着けるだろう。
バルサミコがレバーを引くと、バスがプレーンを繋ぐ道へ吸い込まれて行った。
そんな中、先程まで声を荒立てたカシスは、しばらくミエルを睨みつけると、やがて自分の席へ座った。

to be continued……

 次
(6/6)
戻る
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -