マジバケ小説 | ナノ


洞窟の奥に進み、着いた場所は、大きな竜が眠る場所だった。
宝石の洞窟にいるにふさわしいと言える程美しいそのドラゴン、ガーシュインはまるで門番の様に、奥に居る部屋の入り口を塞いでいた。
恐らく、その部屋の中にガナッシュ達がいるのだろう。

「何だあの竜は?」
「これじゃあ、通れませんの。でも、本当にこの奥ですの?」
「うん。ここで間違いない……と思うんだけど…。」

どうすれば奥に行けるのか解らずただ悩むミエル達。すると、話し声が聞こえたのが、ガーシュインがゆっくりと目を開けた。
侵入者に気付いたガーシュインは身を起こし、大きな翼を広げた。

「我は番人。死は我が支配の下に。」

あの部屋には誰も入れない。そう言ってるかのように、ガーシュインはミエル達を睨み付けた。
だが、その部屋にはガナッシュ達がいる。何としてでもその部屋に入らなければならなかった。

「ここは戦うしかないって訳か?ダブルトースト!!」

トーストを2体呼ぶと、キルシュはガーシュインに向けてノヴァショットを放った。
強い熱気を出す炎をガーシュインは避けようともせずただ受けていた。
が、あまり効いてないらしく、ガーシュインの身体には焼けた痕すら無かった。

「チッ、予想以上に強ぇ。」
「なら、俺の出番だ。ジュリ…」

「ブラックローズ。」

カシスが刃の魔法を放とうとする前に威厳のある声が響くと、カシスの前に黒い薔薇が現れた。
その黒い薔薇は、ガーシュインが放った美の魔法ブラックローズだった。
刃属性は美属性に弱い。青ざめたカシスは辛うじてその薔薇から避けた。

「やべえな……シードル!お前はパウダーの打消しを頼む!!」
「はぁ…仕方ないな。」
「キルシュ、ショコラは前衛に立ってくれ!ミエル!お前は……」

ミエルに支持をしようとカシスは後ろを振り向いたが、そこにミエルの姿はどこにも無かった。
ふと、その時。

ずどんっ!!

何かが硬いものにぶつかった音がすると前から大きな物体がカシスに向かって飛んできた。
カシスとぶつかったその物体は、先ほどカシスが声を掛けようとしたミエルだった。
いつの間にかガーシュインに飛び掛ったのだが、硬い腕によって突き飛ばされたようだ。

「うわぁ!?ミエルちゃん!!大丈夫ですの!?」
「…痛い…。」
「何やってんだよ!?」
「うぅ…だって……だって…」
「何もかも1人でやろうとすんな!!いいな!」
「……はい。」

カシスの支持でミエルは後衛に立ち、マッハラインでカシス達をサポートして行った。
力じゃ駄目ならスピードで叩きつけるしかない、と思ったカシスの作戦である。
シードルが美の魔法でパウダーを消しながらガーシュインの魔法の力が倍になる事を阻止し、
ミエルがスピードを上げ、ショコラが盾となり、カシスとキルシュが攻撃する。
あんな一瞬でこんな作戦を立てるとは、荒れてるとは言え、やはり最年長である彼も頼りになれるものだ。
だが、これ程の作戦を立てて戦いながらも、相手はかなりの体力を持っていて、すでに長い時間が経っても倒れようとしなかった。

「魅惑の輝き。」

ガーシュインが呪文を唱えると、体から光が溢れ、後にそれは大きくなった。
七色に輝く虹の様なその光は、やがて洞窟中に広がり、ガーシュインの敵を襲いかかろうとしている。
もう駄目かと思ったとき、大きな岩がまるでミエル達を庇ってるかのように自分達の目の前に立っていた。
大きな岩男、マッドマンのショコラだった。

「ショコラーみんなをまもるー。みんなとーガナッシュ達の所行くー。」

相変わらずのんびりとした口調だったが、ショコラのその声は、彼らしくない厳しい声だった。

「…そうだ。俺達は行かなきゃいけない。止めるなら、お前を倒してでも行かせて貰うぜ!!」
「同感だ!!キャンディが向こうにいるんだ!!ここで引き返すもんか!!」
「……。」

ガナッシュ達を連れて、皆と一緒に学校に戻る。そのためにも、ガーシュインが塞いでる部屋に行かなければいけない。
そんな思いを抱いて、ミエル達は次々とガーシュインに魔法を放ったが、未だに倒れる気配が無い。
何もかも無駄なのかと思っていた時、ガーシュインは突然動きを止めた。
微動だにせずただミエル達を見つめると、ガーシュインは呼び出したパウダーを消し、大きく開いていた翼を畳んだ。

「死の国の扉は開かれた。行くがいい。」

ただその言葉だけを残すと、ガーシュインはまるで蜃気楼の様に姿を消した。

「…あれ?行ってもいいって事か?」
「そう…みたいだね。」
「よっしゃぁ!!キャンディ待ってろよぉ!!今行くからな!!」
「あっ!!待つですのぉ!!」

道は開かれ、キルシュは勢いよくその部屋へ向かい、カシス達もその後を追った。

 
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