バソリモ村に住むパイライトにキスニカ鉱山へ行きたいとミエルが言うと、そのパイライトはとある民家へ案内をしてくれた。
パイライトの話によると、民家には地下へと繋ぐ梯子があり、ガナッシュとカベルネ、そしてマドレーヌらしき人物も、そこを通じてキスニカ鉱山へと向かったらしい。
普段はとある理由で鍵をかけているらしいが、今日だけは特別だとパイライトは民家の鍵を開け、中に入ったミエル達は、早速地下へと向かった。
ミエル達が梯子を使って地下へ進んでいた頃、ガナッシュとカベルネは二つの洞窟の入り口の内、右側の洞窟の入り口に立っていた。
「オリーブとキャンディはここに入ったヌ〜?」
「間違いない……。」
「それじゃオレたちも気を引き締めて行くヌ〜!!」
拳を上に挙げるカベルネに、ガナッシュは静かに呟いた。
「………もうすぐ先生が来る。ミエル達も来る。君はそっちに合流してくれ。」
「どうしてヌ〜!? 俺達ベストペアヌ〜!!」
「それは今日までの話だ。」
「何勝手なこと言ってるヌ〜!! いい加減にするヌ〜!!」
闇のプレーンに来て、ガナッシュはやたらと1人で行動している。
確かに彼の実力は認めるが、いつも自分勝手に行動する彼に、カベルネはとうとう苛立ってしまった。
親友の怒りが篭った顔を見ると、ガナッシュは溜め息を吐き、再び口を開いた。
「しょうがないな…君にだけは言っておくよ。俺は、エニグマと融合しに行くんだ。
オリーブやキャンディを探すのは、ついででしかないんだ。」
「な…な………なして………?」
予想外の言葉にカベルネは顔が真っ青になった。エニグマは兄の仇。そんなエニグマと、自分の親友が融合しようとしている。
いったい何故そんな事を考えているのか、今のカベルネにはさっぱり解らなかった。
その答えを、ガナッシュは淡々と答えた。
「強くなりたい。それだけさ。」
「……俺達、物凄く強いヌ〜! 強くなる必要ないヌ〜!」
「強いような気がしてるだけさ。」
「俺達、でっかいモンスターもエニグマも何匹も倒したヌ〜!
学校に戻ったあとも、この気持ちを忘れないでいれば、なんでも出来るヌ〜!」
「モンスターを何匹倒したところで自分には勝てやしない…全ての悲しみや、苦しみから解き放たれるほどには強くないんだ………。」
「俺は…………俺はそんなことないヌ〜!
皆と一緒に戦って、自分の強さが、なんとなく分かって来て……それだけで、勇気が湧いてくるヌ〜。」
「俺はもっと強くならなきゃいけないんだ。」
「どうしてヌ〜!?そんなに強くなくても生きていけるヌ〜!!今のままでいいヌ〜!!」
「ただ生き延びるだけが人生でもないだろ?俺にはやらなきゃいけないことがあるんだ。」
ガナッシュがやらなければいけない事。いや、正確にはやろうとしている事。
それが何なのか、カベルネは一つだけ心当たりがあった。
「まさか、ヴァニラを助けに行くつもりヌ〜……?」
「フッ……気づいてたんだ。でも、どうだろう…助けるって言うのかなぁ……。姉が元に戻る事なんて、有り得ないよ。」
悲しみが混ざった笑顔。だが、ガナッシュはやがて覚悟を決めたような表情になり、カベルネを見つめた。
「……とにかく、キミは残るんだ! これはオレの使命なんだから!」
そう言い、ガナッシュはキスニカ鉱山の入り口へと入って行った。
「待つヌ〜!!」
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