しばらく走ると、奥の方から光が溢れていた。
ぶぉおおんと音と同時に目の前に現れたのは、大きくて紫色をした鉄の塊、魔バスだった。
「魔バスが来ましたの!」
「はへぇ〜、やっと来たの〜?」
「へいへい!着いたぜ、闇のプレーンだ!!」
「…何だあのデブッチョは?」
魔バスから聞こえてくる最初の声は、運転手のバルサミコの声だった。
「闇のプレーンか……。」
「闇のプレーンのどの辺りかしら…。」
「やっと来れたわね。結構手間取ったわね。」
「何処がどうっていう訳じゃないけど…なんだか、イヤな雰囲気〜。」
「ははははは。闇のプレーンだっぴ。ははははははは。」
やがて、クラスメートの声も聞こえた。ピスタチオは相変わらず怯えているようだが。
「よーし!!ほんじゃ行くぜ!!カフェオレたちを探しに!!………アレ?」
「どうしたっぴ?まさか、壊れたっぴか〜!? なーんってね!!ははははは!!」
「動かない…。」
「はははははは!!」
「…あれが、運転手なのか?」
『……。』
ようやく修理を終えてやって来たと思ってたのにまた壊れたのか?と、外で見ていたミエル達は心の中で呟いた。
魔バスも、バルサミコも初めて見るトリュフは呆れたようにバスを見つめている。
「あーはっはっはっは! それにしても、あれだよなぁ! サンドイッチ食ってて、汁が垂れそうになった時、縦にして持って舐める奴いるだろ?
レタスとか、ハムとか、びらびらしてるとこを、こう…ペロペロ〜っと。あれ、止めてほしいよなぁ。」
「いや〜ん、なんか親父っぽ〜い。」
「ごまかさないで、バルサミコ!全く、どうするつもりよ!」
バルサミコ達の会話を外で聞いていた7人全員の顔が歪んだ。
ガナッシュ達を探さなきゃいけないこんな状況で、挙句に魔バスが壊れたのに、何を呑気に茶番劇をやってるのだろうか?
もう見てられなかったのか、トリュフが魔バスの方に近づき、やがて思いっきり蹴った。
その蹴りはあまりにも強すぎて、もう少しで倒れるところだった。
「うわ〜!?誰だ、魔バスを蹴ったのは!?」
「うるさい!!お前等、こんな状況に何訳の解らない事言ってんだ!?」
お互いを睨みつけるバルサミコとトリュフ。そんな2人を見て、魔バスにいたクラスメート達は目を見開いた。
「トリュフ!?トリュフなのか!?」
「トリュフだっぴ!!ミエル達もいるっぴ!!」
「ふぅ〜、やっと会えたのね。」
全員が様々な反応をする中、バルサミコはカフェオレを見るなり笑顔になった。
「おっ!!カフェオレ!!いいとこに来た!!」
「アアア、コンドハナニニナルンダ………。」
「今度は改造しねぇから!バッテリー貸してくれ!よっ!!主役!!」
幸い、バッテリーが切れただけのようだ。
ミエル達がバスの中で話をしていた途中、バルサミコがバッテリーを設置し、ハンドルを手に取った瞬間だった。
「ひゃっほーーッ!!走るぜ走るぜーーッ!!ブイブイブイーーンッ!!」
物凄い勢いで魔バスを動かし、乗っていたクラスメート全員がバランスを失った。
「うるっせぇよ!今大事な話の途中なんだ!止めてくれよ!!」
「停まったら死ぬー!サメだー!俺はサメだー!!」
結局、レモンがバルサミコの頭を思いっきり殴り、魔バスはようやく止まった。
「今までの話をまとめるわね。間違ってたら言ってね。最初のクラスメートの数は16人。それとマドレーヌ先生。途中でトリュフと会ってクラスメートは17人になった。
で、今ここにいるのが、12人。残りは5人。それから、マドレーヌ先生。
ガナッシュとカベルネ、それにキャンディとオリーブが、ショコラを助けに行った。
あと、そろってないのは以上の5人で、マドレーヌ先生は彼らを追いかけて行った。」
「そう。大体そんなところ。」
「で、どうする?ここで待ってるかい?彼等がショコラを連れて帰ってくるのを。」
「いや、行こう。行かなきゃ駄目なんだよ。なぁ!」
「そうそう!!行こう行こう!!」
「行くってどこに?ここがどこなのか解ってるの?」
「まず行動することが大切なんだ!頭で考えてても駄目さ!」
「全くだ、兄貴!男は根性とパワーだぜ〜ッ!」
誰もキルシュとセサミの賛成できなかった。特に、現実的なシードルは。
「君達、それじゃ全然お話にならないよ。
どこでもいいから行けばいいって言うんだったら、沼の中にでも飛びこめばいいじゃないか。」
「とりあえず、帰りたい人達は帰るってのはどうだっぴ?」
「ダメよ、そんなのは〜!みんなで帰るって決めたんだから〜!」
「いつ決めたっぴーーッ!!オイラ知らないっぴーッ!!」
今も帰りたい思いで頭がいっぱいなピスタチオは涙を滝のように流しながらアランシアをポカポカと叩いた。
「ガナッシュ達がここに戻るとは限らないからな。待つにしても、ここで待ってることを伝えないことにはどうしようもないよな。」
「その通りだよ!まずは体を動かす!!理屈は後でいいんだ!!」
「お前…それ…ナチュラルで言ってんの?」
「まあ、ある意味正解なのかもしれないな。」
トリュフがキルシュの言葉に同意したが、その声はかなり面倒そうだった。
多分、彼を含めた全員がそうだろう。
「もーいいよ。解った解った。キルシュの好きにしなよ。君がリーダーでいいよ!」
何もかも諦めたようにシードルが言った時だった。
前 次
(3/4)
戻る