3年前、ガナッシュの姉のヴァニラが臨海学校ら帰って数日後。 ガナッシュは禅部屋にいるグラン・ドラジェとマドレーヌの所へ駆けつけた。 彼の顔は、普段の冷静な顔ではない、何かを訴えてるような顔だった。
「先生、俺の姉さんはどうなってしまったんだ!? キャンプから帰ってきたから変なんだ!! 別人みたいなんだ!!」
そんな彼とは逆に、グラン・ドラジェは落ち着いた口調でガナッシュに話した。
「ガナッシュくんだったね? 姉さんがキャンプから帰って来て変わったじゃと? そんなことはない。何も変わっておらんぞ。 変わったように思えるのは、ガナッシュくんが、姉さんの全てを見ておらぬからじゃ。」 「あのね、ガナッシュ、あなたが、姉さんの事を解ってあげることが大切なの。どんなに変わっても、姉さんは姉さんなのよ。」
望んでいた事とは全く違う答えを2人から聞いたガナッシュは唇を噛んだまま禅部屋から出て行こうとした。
「ちょっと待って!ガナッシュ!」 「もういい!!2人には命の重さが分からないんだ!!」
自分が出せる最大の声で叫び、ガナッシュは振り向きもせず禅部屋から出て行った。 それをただ見送るしかなかったマドレーヌは、悲しみに満ちた声でグラン・ドラジェに問いかけた。
「ヴァレンシア海岸での臨海学校………来年も、再来年も、続けられるのですか?」 「うむ。魔法を学んだ以上、闇を避けることは出来んのじゃ。もし誰も闇を克服出来ぬと言うなら、何故魔法などを教えねばならんのじゃ。」 「でも、ガナッシュの姉のヴァニラは………!!」 「ヴァニラか……。確かに、このまま放っておけば、あの娘はこの国の敵になる。 だが、それを抑え込んだところで、何の解決になるか。魔法の力は誰にでも手に入る。」 「魔法を学ぶには、命懸けで挑めとおっしゃるのですか?子供達に、命を懸けろとおっしゃるのですか?」 「分かってくれ、マドレーヌ。その真の恐ろしさも知らずに魔法を教えてきたのは間違いじゃった。 だが、もう遅い。魔法を返してくれとは言えぬ。ならば、やるべきことは1つ。正しい道へと、子どもたちを導くことじゃ。」 「だけど……危険すぎる……。」 「愛とはなんじゃ、マドレーヌ。そして、愛の反対とはなんじゃ? お前はそれを生徒達に教えねばならん。解るじゃろ?」
難しいが、決して間違ってないグラン・ドラジェの言葉に、マドレーヌはこれ以上何も言い返せなかった。
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