マジバケ小説 | ナノ


「マドレーヌ先生!」

シードルの声に気付いて振り返ると、自分の方へ駆けつける生徒達が目に映った。

「シードル!それに、他の皆も!」
「よう、先生!大丈夫だったか!?」

カシスのふざけた態度に先生はカッとなった。

「先生は大丈夫に決まってるでしょ!!」
「…怒る所そっちか?」

トリュフがボソッとそう囁いたが、マドレーヌには聞こえなかったようだ。

「それよりも、あなた達、エニグマに連れられてこっちに来ちゃったの!?」
「俺と、シードルと、それからセサミはそうだけど……カフェオレ達は、一回学校へ戻ったらしいぜ。」
「オレノ、ダイカツヤクデ、コッチニキタンダ。」

エヘンと胸を張るカフェオレ。生徒の無事を知ったマドレーヌは安堵の息を吐いた。

「そうだったの………。今まで、大変だったでしょ?でももう大丈夫よ。
すぐにカフェオレを改造してもとのプレーンに帰れるようにしてあげるわ!」

どうやらマドレーヌもカフェオレを改造出来るようだが、また改造されると聞いたカフェオレにはそんなにいい話ではなかった。

「カフェオレちゃん!!がんば!!」
「シクシクシク。オレッテ、カワイソウ。」

カフェオレが泣きだす中、カシスがいきなり大声を出した。

「ちょっと待ってよ、先生。俺達、途中でキャンプをやめて学校に帰ったらその場で退学なんだけど。」
「は?たかがキャンプやめただけで退学?」
「退学!?そんな馬鹿な!!誰がそんなこと言ったのよ!?」
「校長が、出発前に……。」

恐る恐るセサミが話すと、シードルがセサミの口を押さえた。この事はマドレーヌには内緒にするように言われたからだ。
だが、それを聞いたマドレーヌは開いた口が塞がらなかった。
いくら校長がこの生徒を信頼し、頼ってるとは言え、そんな事まで言い出したなんて信じられなかった。

「そんな馬鹿な……そんなのただの冗談よ!学校に帰りましょう!」

もうこれ以上生徒を危険に巻き込むわけにはいけない。
マドレーヌは何とか説得して、目の前にいる子達を学校に帰らせようとしていた。
だが、彼女の思いを振り払うようにカシスは首を横に振った。

「冗談じゃないよ、先生。俺、分かるよ。校長は、俺達を試したり、騙したりしてるんじゃないよ。」
「そうだね、旅の途中、ずっと感じてた。」
「感じてた……?いったい何を……?」

首を傾げる担任の先生を真っ直ぐ見つめたまま、シードルは話を続けた。

「僕等の後ろで、校長がずっと見守ってるんだ。
僕等が、戦ってる時やめげそうになった時に、ふっと包み込んでくれた。とても、優しくて、暖かい気持ちで。」
「俺達、ずっと校長と一緒だった。みんなも感じてただろ?」
「そうですの!?私達、グラン・ドラジェに見守られてましたの!?」
「さあな。それらしき物は全く感じなかったが。」

シードルとカシスの言葉を聞いてペシュは目を大きく見開き、トリュフは眉を吊り上げた。
どうやら2人は感じなかったようだ。

「俺だってそうだぜ。ずっと校長と一緒だった。ミエルはどうだ?校長が見守ってくれたよな?」

セサミが聞くと、ミエルは腕を組みながら考えた。
確かに守られた感じはした。だが、それが皆の言ったように校長先生だったのか、いつも自分に声を掛けた女性の声だったのか、まだはっきりしなかった。

「……ごめん。私もよく解んない。」

ミエルの言葉にほぼ全員驚いたが、やがてカシスが納得したような顔になった。

「こっちに来てから、ずっと命がけの戦いが続いてたからな。
ミエルはリーダーだったしまとめ役として、気を休める暇が無かったんだ。
だけど、俺には解るんだ。校長は命がけで俺達に何かを教えようとしている。
それが何なのか、教えてくれよ先生!」

自分の生徒達が真っ直ぐな瞳で自分を見ている。
まだ子供だったと思った生徒達の少し大人びた様な姿を見てマドレーヌは溜め息を吐いた。

「………あなたたちには、敵わないわ。流石、校長が走り回って集めてきた生徒ね。」

 
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