マジバケ小説 | ナノ


まだ学校に残ってるクラスメートは居ないかあちこち探してみると、教室の長い机に顔を俯いたまま座っているパペット、カベルネ・チープトリックを見つけた。

「カベルネ君〜。」

自分を呼ぶ声を聞きカベルネは顔を上げた。
自分を君付けで呼ぶ人はクラスメートの中では1人だけ。ミエルが自分を迎えに来たようだ。

「どうしたんだよカベルネ。兄貴のこと思い出してたのか?」

カシスの言葉にカベルネの表情が暗くなった。カベルネの兄、シャルドネはとある『事故』で亡くなってる。
シャルドネはよくカベルネにキャンプには秘密があると話していたが、今日がそのキャンプの日である事だけあって、そんなシャルドネの事を思い出すようだ。

「ガナッシュの姉貴は学校をやめた後も、時々、この教室に、俺の兄貴に会いに来てたんだヌ〜。」

そう言うとカベルネはある出来事を思い浮かべていた。

カベルネの兄シャルドネがガナッシュの姉ヴァニラと話をしていた。それをカベルネは遠くでただじっと見ている。

「今までどこに行ってたの?皆心配してたよ? 」
「心配?いったい誰が?する訳ないでしょ?」
「まだ怒ってるの?」
「怒るって、何を?あなたのお父さんの事?」
「父に何を言われたの?」
「何も言われてないわ、いつも感じていた事よ。私の中には闇の精霊の血が流れているの。私を嫌う人がたくさんいるのは知っていたもの。」
「君の敵になる奴は僕が全て倒す!世界が君の敵になるなら世界なんかブチ壊してやる!僕を信じて!」
「心配は無用よ、私は私のやり方を見つけたの。私には力があるの、今までみたいな弱虫のヴァニラじゃないわ。さようなら、シャルドネ、カベルネ」
「ヴァニラ!!」

ヴァニラはシャルドネの叫び声にも反応せず、ただスタスタと歩いていくだけだった。

「あんな奴!!放っておけばいいヌ〜!!もうあんな奴のことは忘れればいいヌ〜!!」
「ヴァニラは普通じゃない!何かあったんだ!」
「何か!?何かってなんだヌ〜!?」

シャルドネはヴァニラを、カベルネはシャルドネを追うように走っていった。


話を終えたカベルネの目に涙が篭ってるのを見てアランシアが首を傾げた。

「もしかして……泣いてたの…?」
「そんな事ないヌ〜。ちょっと目にゴミが……。」
「お兄さんの事思い出してたのね…。」
「行こうぜカベルネ。海に行って何もかも忘れようぜ。」
「バスの中でたっぷり話をしようよ。」

未だにしょんぼりとした顔であるが、やがてカベルネも椅子から立ち上がった。
すると、ミエルがカベルネにハンカチをそっと渡した。

「泣きたければ泣きなよ。」
「…ありがとうヌ〜。」

カベルネがそのハンカチで鼻を噛み、鼻水でびしょびしょになったハンカチがミエルの手元に置かれた。
彼女に出来る事はこれしか無かったが、少しでもカベルネの気分が晴れる事を今は願っている。

禅部屋にいるクラスメートはペシュが全員バスへ連れて行き、残りの6人も出ようとした時、ミエルは職員室へ向かった。

「私、先生に報告してくるね。」

担任のマドレーヌ先生にクラスメートのほとんどがバスに居る事を報告しに職員室へ行くと
ピンクのドレスを着ているマドレーヌが校長のグラン・ドラジェと話をしているのが見えた。

「しかし、それでは生徒達が……。」
「大丈夫。君ならやれると信じている。」
「…お言葉は嬉しいのですが。」

2人の表情を見ると、そんなにいい話ではないようだ。ミエルは先生の方へ近づき声を掛けた。

「先生。」
「あら、ミエル。どうしたの?」
「クラスのほとんどバスに行きましたから伝えに来ました。」
「そうだったの。皆と一緒にバスで待ってなさい。」

報告を終え、ミエルもバスに行こうとした時だった。

「ミエル君。」

校長が急に声を掛け、ミエルはまた振り向いた。

「学校は楽しいかのう?」
「ええ……まあ。」
「そうか、キャンプも楽しく過ごすんじゃぞ。」
「……はい。」

そして、ミエルもバスへ向かった。校長と、その周りにいる無数の精霊達の見送りの言葉を聞きながら。

 
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