マジバケ小説 | ナノ


辺り全体が薄暗く、微かな光すら無い森の中をガナッシュはただ歩いていた。
まだ見つかってないショコラとセサミを探しに1人でマサラティ村から南へと向かったのだ。
ふと、ガナッシュは何かの気配を感じた。
エニグマのような警戒を与える気配ではなく、何処か懐かしく、温かい気配を。

「……ミエル。」

ガナッシュは小さくそう呟いた。何故その名を口にしたのか自分でも解らない。
けど、何となく彼女が近くにいるように感じた。彼女が自分の事を憎んでいると解っていながらも…。

あの日以来、彼女とはまともに話も出来なくなった。
かつて彼女と一緒に過ごした時間も、今では決して戻る事の無い思い出になっている。
いや。彼女にとっては忘れたい過去なのだろう。
話もしたくない程憎い人と過ごした時間など、覚えていたい筈が無いのだから。
ガナッシュはとある物を取り出した。鷹の絵が付いてるハーモニカ。
それは、ミエルが自分にくれた、最初で最後の誕生日プレゼントだった。

「ガナッシュ~。」

昼休み、いつもの場所に行こうとした時、ミエルが自分を呼びながら駆け付けて来た。
彼女の手には、リボンで結ばれた小さな箱があった。

「ガナッシュ、今日誕生日だって聞いたから、これ。」

そう言うと、ミエルはその箱をガナッシュに渡した。
中に入ってたのは、鷹の絵と、Ganacheと言う字が刻まれたハーモニカだった。

「これなら、無くしてもすぐ見つかると思って…。」

以前ハーモニカを無くしたガナッシュのためにマーキングしてもらったらしい。
だが、ガナッシュはただじっと見つめていただけだったので、ミエルは気に入らなかったのか不安になった。
しばらくしてガナッシュがミエルに礼を言うと、さっきまで不安に満ちたミエルは安心したかのように笑顔になった。
いつもの彼女らしい、明るくて、優しい笑顔に。


ガナッシュは唇を噛んだ。その時は、2人の仲がこんな風になるとは思わなかった。
完全に予想出来なかったと言えば嘘になるが、そうなる事を決して望んでなどいなかった。
確かに喧嘩はしたが、すぐ仲直りするつもりだった。
だが、いくら話し合おうとしても、ミエルが拒むせいで、関係はより悪化するだけだった。
ふとガナッシュは思った。もし今の2人の関係が前の日のままだったら、今の情況はどうなっていたか。

これから自分のしようとしてる事を聞いた時、前のミエルは、そして今のミエルは、自分に何と言うのだろうか。

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