マジバケ小説 | ナノ


村長の家に入ると、そこにはいつものようにジンジャーとシナモンがいた。
窓を見ているシナモンは病気とは思えない位に顔色がいい。近くにトリュフ達がいる事に気付くと、いつもの声で話しかけた。

「あら、お久し振り。近頃、お父様が家から出してくれなくて…。」

どうやら、シナモンには今までの状況を知らないようだ。無理も無いだろう。家から出られなかったのだから。

「ナニモシラナインデヤンノ。ノンキナモンダゼベイベー。」
「…何?何の事??」

からかってるようなカフェオレの言葉にシナモンは目を見開いた。
トリュフ達はジンジャーを見つめた。家から出してくれない。明らかに状況を知っているからそうしてるのだろう。
皆の視線を感じて目を反らしたジンジャーを見ると、シナモンはジンジャーに駆け寄った。

「お父様!!一体どういう事!?私がここにいた間に何が起こったの!?説明して!」
「私も詳しくは知らされていない。ただ一つだけ言えるのは、メースという男は他の誰より勇気を持っていたってことだ。
すまない…こんな父親で許してくれ。」
「解らない!!何なの、それ!!何も解んないっ!!」

鋭い声で叫びだしたシナモンは真っ直ぐ家から飛び出した。

「仕方がないんだ…私だって、辛いさ…見ての通り、この村の男たちはメースやシナモンほどに、心が大人に成りきっていない。
メースがこの村に居ても、何も良いことは無いだろう。
旅の人…、シナモンはきっと、村外れのメースの家に向かった筈。
もし、あの娘がメースの後を追うと言い出したら、これを渡してくれ…。」

ジンジャーはゆっくりとトリュフ達に近づき、ずっしりとした巾着袋をトリュフに渡した。
中にはキャムティ金貨が10枚入っていた。

「これを売って装備を整えるよう、伝えておいてほしい。」
「お金で済むことじゃありませんの!!何も解ってませんの!!皆が変わらなければいけませんの!!
皆、皆…今のままじゃいけませんの!!」
「金の問題じゃないだろ?分かってんの、オッサン?
自分の娘が一生誰かを恨んだまま生きて行くなんて、耐えられるかい?」
「……解っているとも…私はシナモンの父親だ…。皆の思うところは痛いほど解るとも…。」

「……解ってる?」

トリュフだった。ジンジャーを見つめてるその目は、明らかに彼を疑っていた。

「何が解ってるんだ?俺には、お前が逃げてるようにしか見えない。
リーダーであるお前が村の人にメースは悪魔じゃないと伝えれば、メースはここを出て行く必要も無かった。
なのにお前は何もしなかった。いや、今だって何もしていない。そんなお前に何が解るって言うんだ!?」

今も辛そうなジンジャーを睨みつけるトリュフの肩に、カシスが手を乗せた。

「行こう。もういいよ。もう、ここにはいたくないよ。」
「…そうだな。こいつ等を見てると反吐が出そうだ。」

そして、トリュフ達はジンジャーの家から出て行った。

ジンジャーの家から出て行くと、近くのベンチに座ってミエルが目に映った。

「ハナシハスンダゼ、ジョウチャン。」
「……うん。」
「とりあえず、メースの家に行ってみるか。」

ミエルが加わり、6人はメースの家へと向かった。果たして、シナモンはそこに居るのだろうか?

 
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