マジバケ小説 | ナノ


「そんなの嘘だよ!!」

音楽室のドアを開けるなりこんな叫び声が部屋全体に響いた。
奥には4人のクラスメートがいて、その中でもブロンドの少年、シードル・レインボウが長い銀髪の男、カシス・ランバーヤードに怒鳴っている。
だが、カシスはただニヤニヤと笑いながらそんなシードルを面白そうに見ていた。

「それが本当なら毎年のようにヴァレンシア海岸に行くわけないじゃないか!!」
「学校は噂のもみ消しに必死なのさ。この時期になると何者かに校門を破壊されるっていうし……絶対何かあるぜ」
「毎年誰かがいなくなってるってのが本当だったら誰がいなくなったのさ。証拠はあるのかい?」

どうやらカフェオレが言っていた怖い話はこれのようだ。ずっと楽しみにしていたキャンプなのに、その日になる度に誰かが行方不明になると言う噂を聞かされたら誰もが怖いと思うだろう。
カシスはカシスなりにその噂に興味津々で楽しんでるようだが、少しは相手の気持ちも考えて欲しいものだ。
そんな中、横で2人の会話を聞いていた少女、オリーブ・ティアクラウンがシードルの問に答えた。

「ガナッシュの姉さんが……三年前キャンプから帰ってきてすぐ家出しちゃったわ…。」
「キャンプとは無関係じゃないか。結局そんな話に尾ひれがついただけさ。」
「夢がねぇな。」

カシスの言葉にシードルはカッとなった。

「行方不明になるなんて話のどこに夢があるのさ!」
「もうやめましょう……こんな話……。」

2人の言い争いをこれ以上聞けなかったオリーブは耳を塞いだまま俯き、ようやくシードルもカシスもこれ以上は争わなかった。

「迎えに来たよ。何の話してたの?」

4人の声とは全く違う声が聞こえ、4人はやっとミエルがいる事に気付いた。

「お、ミエル来てたのか?ミエルはこの噂どう思ってんだ?」
「何の噂?」
「ミエルにまで変な事聞かせないでよ!!ヴァレンシア海岸は安全なリゾート地さ!」
「どーだか。」

現実的なシードルと面白い事が好きなカシスがまた言い争いをしようとすると、ハープを弾いていたアランシア・スコアノートが終止符を打った。

「どっちが正しいかなんてどうでもいいよ〜。キャンプが楽しければそれでいいよ〜。」

彼女の言葉でようやく事は納まり、4人はミエルと一緒に音楽室から出て行った。全員が音楽室から出る間もオリーブはワナワナと震えている。

「チビちゃん?どこか具合でも悪いの?」
「変な胸騒ぎがする。カシスが言ってる事が起きないといいんだけど。」
「……。」

どうやらオリーブはカシスが言ってた噂の事が未だ気になってる様だ。

「大丈夫。きっと大丈夫だよ。それに、何か起きても最後は皆笑って帰れる筈だから。」
「…うん、そうだね。ありがとう。」

ようやくオリーブが微笑むのを見てミエルはほっとした。

「ミエルも…最後は笑ってくれるよね?」

オリーブの囁きは、本人には届かなかった。

 
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