「確か東都デパートって言ってたよね」

「あぁ、急ごう」


既に姿が無かった2人とは別に、私と零さんは車に乗り込み急いで東都デパートへと向かった。先に走り出して行った2人とはほぼ同時に到着し、蘭ちゃんが待つデパートの中へと入る。そこには既に、佐藤刑事、高木刑事、目暮警部などの見知った人達が現場の状況を調べていた。


「おぉ!君たちか!」

「警部はん、和葉は!?」

「今捜索中だよ」


なかなか手掛かりが見つからなくてね、と深刻な顔をする目暮警部を見て捜索がとても難しい状況なのだと悟った。


「ここ最近の連続誘拐事件との関連性も調べているんだが・・・」

「連続誘拐事件って、ニュースになってるあの誘拐事件ですか?」


私が聞くと、高木刑事がその誘拐事件の詳細について教えてくれた。誘拐されたのは全員女性で、何をされる訳でも無く少し離れた場所で解放されるという。


「だけどまだマスコミに発表していない点が一つあるんだ。それは、誘拐された女性が何故か全員、髪の毛を後ろで1つに結いていたということ」

「なるほど・・・馬の尻尾やな。和葉もいつもそうやし」


どうしてポニーテールの女性ばかり狙われるのか。さっぱり検討がつかない。だけど今の高木刑事の話から分かる事は一つだけ。


「この事件は模倣犯では無く、その連続誘拐事件の一部だと見ていいということですね」


ーーそう、そういうこと。

零さんの言葉に、私はうんうんと頷いた。


「では連続誘拐事件の被害者女性が発見された場所、教えて頂けますか?」

「あ!地図もちょーだい!!」

「被害者女性の証言もあったら嬉しいんやけど」


探偵達が一斉に動き出し、側にあった机の上に地図を広げて捜査会議が始まった。これは私が口を出す隙が無く、蘭ちゃんと一緒に3人の探偵を眺めていた。あれこれ意見を出し合う彼らの頼もしい背中を見ていると、和葉ちゃんは絶対大丈夫な気がするから不思議だ。


「発見された場所は随分ばらばらだね」

「せやなぁ、共通点も無いで」

「あぁ。妙な事件だな・・・」


心配事がもう一つあったのを忘れてた。

ーー新一くん、コナンモードが抜けてます!!
零さん見てるから!地図見るフリして横目で確かに見てるから気をつけて!!

必死にそう訴えても、声に出せないなら届くはずも無い。服部くんと一緒だとどうも口調が高校生探偵になってしまうらしい。とにかく彼をどうにかして注意しなければ。私は3人が地図を広げる中心に近付いて行き、コナンくんを抱き上げた。


「だめでしょ?コナンくん、探偵さん達の邪魔したら」


普段私はコナンくんを子供扱いしない分、今の行動が腑に落ちないのか、零さんがジッと見つめている。


「わっ、何すんだよ名前!」

「ちょっと!コナンモード抜けてるってば・・・ッ!」


小声で怒鳴るようにそう言うと、新一くんは"やべ!"と言いながら瞬間的に零さんの方を見た。すると零さんは、ニッコリ笑ってこう言ったのだ。


「君は本当にすごいね」


ーー・・・その言葉の真意は分からない。だけど何か確信に近いものを得たらしく、満足気な笑みを浮かべていた。


「や、やべぇ。バレたか?」

「分かんないけど、何あの笑み。怖過ぎるんだけど」


この先どうやって言い逃れすればいいのかしきりに考えていた最中、再び響いた着信音で私の思考は事件へと引き戻された。


「・・・公衆電話、やな・・・」


犯人からの可能性もあると思った服部くんは、手招きで警部達を呼び、スピーカーモードにしてから電話を取った。


「・・・・・・もしもし、俺や」

『・・・へーじ?』


電話口から聞こえてきたのは、とてもか細い声。

ーー和葉ちゃんだ。一先ず無事で良かった。


「・・・和葉ッ!?お前今どこや!?大丈夫なんか!!」

『私、急に口塞がれて全く知らん場所に連れてこられて、暫く連れ回されたんやけど急に"お前じゃない!"って言われて車降ろされて・・・もう何が何だかよう分からんの!』

「君、今いる場所に目印になるような物はありますか?」

『うーん・・・それが全然知らん場所で・・・公衆電話探しにちょっと歩いたんやけど住宅街っぽい所としか・・・』

「それじゃあ一旦切ってから110番をして下さい。そうすれば発信元が警察に表示されるので」

『は、はい』

「和葉、場所分かったら直ぐ迎えに行ったるから大人しゅうしてろよ!」

『うん!』


和葉ちゃんからの電話が切れたのを確認すると、零さんは警部達の元を離れて自分のスマホから電話を掛けた。私もそっと側へ寄ると、今使っているスマホが安室透名義でなく、降谷零の方だと気が付く。内容までは聞き取れなかったけど、多分自分の所へ1番早く特定した場所が伝わるように根回しでもしたんだと思う。


「さて、僕は一足先に車で出るけど・・・君達も乗っていくかい?東と西の探偵くん」

「一足先にって・・・まだ和葉姉ちゃんの居場所分かってないよ?」

「それとも・・・何かあるんか?アンタの中に推理が」


ーー探り合う互いの腹の中。




2016.12.06
「03」

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