古キョン

朝早くからハルヒの電話で起こされ、いつもの場所へ向かう。
そこにはいつも通り既に俺以外全員揃っていて、これまたいつも通りハルヒに遅刻の罰としてお茶代奢りを命じられた。
店内は6月なのに冷房が効いていて、少し肌寒いくらいだ。
各々席に着くと、ハルヒが 町内パトロールするわよ、と切り出した。
大方予想はついていたので、誰も何も言わない。
そして特に何も成果を得ていない町内パトロールのグループ分けをするためにくじを引く。
その結果、初めて古泉と同じグループになったのだが。
「…おい、」
眉間に皺を寄せつつ古泉を見る。
「どうしました、キョン君。」
「お前、さっきからにやにやとキモいんだが。」
喫茶店を出てから今まで、古泉の顔はこれでもかという程緩んでいた。
腹が立つことに元々が美形な方だから、周りは何も思ってないようだが、一緒にいるこっちとしては少々気味が悪い。
「にやにやなんて、してますか?」
「してるよ、ずっと。なんなんだ一体。」
「なんだかデートみたいじゃないですか、今の僕達。」
いや只のパトロールだろ…そう思ったけれど、余りにも古泉が幸せそうだったので言わないでおいた。
「デートなら、言えばしてやるのに。」
聞こえないくらいの声量で呟いたつもりだったのだが、どうやら聞こえていたようで。
目を見開いて此方を見てくる古泉に、こんな顔もするんだ、と少し新鮮な気持ちになる。
「それ、本当ですか、」
「いや、まぁ、気が向いたらな。」
古泉を見ると、さっきよりもずっと嬉しそうにしていて、それが少し可笑しかった。
「そんなに嬉しいか、」
「嬉しいですよ、まさかキョン君からそう言ってもらえるなんて。面倒臭いって言いそうじゃないですか、」
失礼な、と思ったが、まぁ当たっているので良しとする。
「でも、ハルヒにはバレないようにしないとな。俺達の関係とか。」
「大丈夫ですよ、」
古泉と付き合うにあたって、俺の一番の心配だったそれを、古泉は一蹴した。
「は、大丈夫ってお前、」
「もしもバレたとしても、僕がキョン君を守ります。」
古泉は、そこらの女子が聞いたら倒れるんじゃないかって台詞をさらりと言ってのける。
「守るって、何から。」
そう問い掛けると、古泉は一瞬考えるような素振りをしてから
「キョン君を悲しませるもの全てから、です。後は、僕とキョン君の仲を引き裂こうとするものからですかね。」
と言ってのけた。
おいおい流石にかっこつけすぎだろうその台詞。
俺が呆気にとられ何も言えないでいると、古泉は爽やかに微笑みながら
「今の一応プロポーズなんですけど、分かりました?」
と爆弾発言をしてきやがった。
「いやもう意味が分かんないから。」
「今日って、プロポーズの日なんですよ。だからしてみました、わかりにくかったですかね。」
そういう問題じゃない気もするが、まぁこいつがおかしいのは元からだしな、うん。
「そうか、だが日本じゃ同性同士の結婚は認められていないぞ。」
「はい、それが問題ですよね。」
心底残念そうな顔をする古泉に一抹の不安を抱きながら、数歩先を歩く。
「…まぁお前みたいな奴に付き合えるのは俺だけだろ。結婚は出来ないにしろ、ずっと傍にいてやらんこともないぞ。」
後ろから キョン君、と古泉が驚きの混じった声で俺を呼んでいるが、流石にこんな赤い顔を見せるのは恥ずかしいので、聞こえないふりをして歩き続けた。

end.

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ぐだぐだ

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