福→エイ

部屋中に響く音楽、絶えず聞こえる奇声、紙とペンが擦れ合う音。
今日も相変わらずな、新妻君宅。
ただいつもと違うのは中井さんがいなくて、新妻君と二人きりだということ。
まぁ二人きりになるのはたまにあったりするんだけど、最初からってのは中々ない。
嬉しい反面、どうしようっていう戸惑いもあって。
ちらりと新妻君の方を見る。
いつも通りギャーギャー騒がしい。
きっと新妻君はこんな状況、全く気にしてないんだろうなぁ。
二人きり、だとか、どきどき、だとか、そういったものとは縁がなさそうというか興味がなさそうだし。
…そんな相手に片想いしてる、とか。
気付いてないんだろうなぁ、当たり前だけど。
「なー、新妻君。」
「どうしたんですか、福田さん。」
「新妻君はさ、真城君のこと、好きか?」
「好きですけど、なんでですか?」
「…いや、なんとなく。高木君とか、平丸君も好き、だよな。」
「好きですよ。」
「じゃあ、俺は?」
「勿論好きです。」
違う、それは俺が欲しい好きじゃない。
俺が欲しいのは、もっと別の好き。
「福田さんは、僕のこと好きですか?」
「…好き、だよ。」
恋愛対象として、だけど。
新妻君は、俺の返事を聞くとへらっと笑いながら 嬉しいです、と言った。
「東京に来て、色んな人と出会えました。これから先も、時に助け合い時に競い合えるような、そんな仲でいたいです。」
「そうだな。」
「これからもよろしくです、福田さん。」
「こちらこそ、よろしく。」
新妻君が本当に嬉しそうに笑うから。
俺は君を違う意味で好きなんだとは、言えなかった。


いい友達ずっと友達、
残酷すぎて笑える

(悪気はないって分かりきっているけれど)
(流石にきついな)


end.

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久々福エイ。
新妻さんを落とすの大変そう。
title:確かに恋だった

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