宮高

年が明けてすぐにかかってきた1本の電話。その電話の主は予想通り高尾だった。俺が出るとすぐに「今日のお昼すぎに遊びに行きます」とだけ要件をつげると、その電話はぷつりと切られた。その後すぐ届いたメールには『13時頃行くんでよろしくでっす』、語尾にはご丁寧にハートマーク付き。高尾からのこういった誘いは、いつも急だったから慣れていた。『お前何勝手に決めてんだ轢くぞ、まぁ来たければ来れば』『宮地サンまじツンデレ』このやり取りも、いつも通り。


「宮地サン、あけましておめでとうございます」
「おー、おめでとさん」
約束の時間きっちりにやってきたこいつは部屋に入るなりそう挨拶をすると、先月出したばかりのコタツに許可なく座り込む。足を中へ突っ込むと、「あったけー、宮地サン自分の部屋にコタツとか羨ましい」なんて言いながらへにゃりと笑う高尾。別に可愛いとか思ってねーよ、うん。高尾がきっと入るだろうと思って、態々コタツの電源入れて待ってたりなんてしてねーよ、うん。高尾の向かい側へ座り、足を伸ばす。相変わらず高尾はへにゃへにゃ顔のままだ。
「今年も仲良くしてくださいね、してくれなきゃ轢く」
「それ俺のだ、とるな馬鹿轢くぞ。まー仲良くしてやってもいいけど」
「宮地サン優しー!今年もいっぱい思い出作れるといいですね、また去年みたく夏には海に…」
さっきまでぺらぺらと喋っていた高尾が、急に口を噤んだ。心なしか、表情が硬い。じわりと、高尾の綺麗な目に涙が滲むのが分かった。
「…高尾?」
「夏…宮地サンもう卒業しちゃってるんすよね」
俺から目線を逸らしながらそんなことを聞いてくる高尾の真意が分からず、思わず眉を顰める。
「は?そりゃそうだろ」
「卒業…もうあとちょっとしか一緒にいれない……」
ここまで聞いて漸く理解出来た。どうやら俺が卒業することを思い出し、ショックを受けていたらしい。なんだこいつ可愛いなくそ。
「いやお前自分で言ってなに落ち込んでんの?」
「宮地サン卒業すんのやだぁ…」
「無茶言うなっての」
「でも卒業したら会えなくなるもん」
卒業を悲しむ高尾を可愛いと思いつつ、段々腹が立ってきた。卒業したら会えないってなに、会おうと思えばいくらでも会えんだろアホかこいつ。
「お前さ、」
「…はい?」
「なんで俺が卒業したらもう会えないとか思い込んでんの?なんなの?俺が卒業したら俺とお前はサヨナラなわけ?ふざけんな轢くぞまじで」
「え、え、」
「卒業しても会えんだろ、それともお前は卒業までのお付き合いだって思って俺に接してたわけ?」
一気に捲し立てると、先程までぐずっていた高尾がぽかんとした顔でこちらを見た。高尾に腹を立てつつも、この表情も可愛いなんて思ってしまう俺はだいぶ重症かもしれない。そんなことをぼんやりと考えていると、高尾の顔がくしゃりと歪み、先程までぎりぎり零れていなかった涙がぼろぼろとその両目から零れ落ちてきた。やべ、泣かせた。
「、たか」
「そんなわけないですよ、俺だってずっと宮地サンと一緒にいたくて、でも宮地サンが卒業して大学生になったら、きっともっと楽しいこといっぱいで…俺のことなんか忘れちゃうんじゃないかって」
「…轢く。お前轢くまじで轢く決定だわ」
駄目だこいつ全然わかってないわ。俺が一番楽しいと感じんのは、お前と一緒にいる時なのに。
「なんでっすか、やですよ!」
「楽しいこといっぱいですぐ忘れるなんて、そんな軽い気持ちで付き合ってねーよ!俺がどんだけお前のこと好きかちょっとは」
「え」
「あ?………!い、今のなしな、お前は何も聞いていない」
ついかっとなって余計なことまで喋ってしまったことに今更気付く。高尾の方を見ると、それはそれは嬉しそうな顔をしていましたとさ。ってかお前さっきまで泣いてただろ涙どうしたおい。
「聞いた!バッチリ聞いた!へへ、宮地サンもちゃんと俺のこと好きでいてくれてたんですね」
「あーもー最悪だわ」
「照れなくていーんすよ!素直に好きだって言っちゃえばいいじゃないですかっ」
少し赤くなった目を嬉しそうに細めて、へらへらと笑う高尾。なんだこの流れ、どうしてこうなった。まぁ泣かれるよりはいいけど。それでも、なんとなくむかつく。ここぞとばかりに俺をからかう、高尾が。
「……そうだな、好きだよ…和成」
「!!?」
「はーコタツあったけー」
「みみみ宮地サン今なに、え、名前、え!!!!」
予想通り、とてもいい反応をしてくれた高尾を内心笑いつつコタツ布団に顔を埋める。俺に勝とうなんざ百年早いわアホ。
「あ?気のせいだろ大丈夫かお前」
「宮地サンほんとずるいっすよね…」
「なんのことかさっぱりだわ」
少しくぐもった声でそう返してやる。あー駄目だにやける。こいつ可愛すぎ。
「…卒業してからもずっとよろしくお願いしますね、清志サン」
「!?は、おま…っだー、もう!よろしくしてやるよば和成!!」
「ば和成ってなんすか!」
「お前なんかそれで十分だろばーか!」
さっきの発言撤回、やっぱ俺こいつには勝てねーわ。


あけましておめでとう、末永くよろしく
(俺清志サン大好きです、これからもずっと)
(は?俺だって大好きだわ調子乗んなよ和成)


end.


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あけてますねおめでとうございます!!
遅すぎだろなに今更元旦のお話書いてんのって感じですねすみません…
最近宮高が可愛すぎて辛い。名前呼びをさせたかったが為に書きました、えへ!
今年もよろしくおねがいします。


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