緑高

「ねー真ちゃん見て、星出てるー。」
部活終わりの帰り道、ふと上を見上げるとこんな都会にしては珍しく綺麗な星空が広がっていた。
そのことを隣にいる真ちゃんに教えると、彼はちらりと上を見上げ 綺麗だ、と呟いた。
俺からしたら、そんな真ちゃんの横顔の方が綺麗なんだけどなー。
そんなことを考えていたら歩む足が止まっていたらしく、早くしろ、と急かされた。
ごめんごめん、と謝りつつ、再び真ちゃんの横に並ぶ。
今までもこうして一緒に帰ってはいたけれど、その時と少し変わったことがある。
まず一番大きいのは、俺と真ちゃんの関係。
まぁ所謂恋人同士、になった、みたいな。
それから、俺と付き合い始めて真ちゃんは優しくなった。これは絶対。
今だってほら、歩くのが遅いと悪態をつきつつも俺を置いていくなんてことはせずに、俺のペースに合わせて歩いてくれている。
それに、この立ち位置。
真ちゃんはさり気なく車道側を歩いている。
俺もお前も男なんだから、そんな彼女を守る彼氏みたいなことしなくていいのに、なんて少し笑えたけど、それ以上に大切にされてるんだって嬉しくなった。
きっと真ちゃんにそんなことを言ったら 何を勘違いしてるんだ、これは偶々だ、なんて言われちゃうんだろうなぁ、ツンデレだから。
色々考えてたら、真横にいる真ちゃんがとても愛しく思えて。
「ねぇ真ちゃん、」
「なんだ。」
切れ長の綺麗な瞳が俺を映す。
あぁ、これも変わったところだ…真ちゃんは俺の目を見て話してくれることが多くなった。
「大好き。」
改めて言うと少し照れくさくて、真ちゃんから目をそらす。
急に言いたくなったんだー、なんて恥ずかしさを誤魔化すようにおどけて言ってみるけれど、真ちゃんからの反応がなくて。
「…真ちゃん?」
横を見ると真ちゃんの姿がなくて、驚きつつ後ろを振り返ると少し離れた所に真ちゃんが突っ立っていた。
「え、何どうしたの。」
そこまで戻り、真ちゃんの顔を覗き込む。
「…あ、」
その顔が、暗闇でも分かる程赤く染まっているのを見て、思わず此方も赤くなってしまう。
「…急に何なのだよ、お前は。」
真ちゃんが顔を手で隠しながらそんなことを言うから、ごめんなさい、なんてよく分かんない謝罪の言葉が口から出た。
「でも、何か、急に言いたくなっちゃって。」
ダメだった?そう首を傾げつつもう一度真ちゃんの顔を覗き込むと、何も言わずに頭をひと撫でされた。
「…行くぞ。」
あれ、返事なしかー。
まぁいいんだけどさ、別に。
スタスタと先に行ってしまった真ちゃんの背中を追いかけ、横に並ぶ。
なんとなく会話が途絶えてしまって、無言のまま歩く。
暫く続いた沈黙を破ったのは真ちゃんだった。
「…俺は」
「え?」
真ちゃんを見上げたけれど、その目は前方を見ていて何を考えてるか分からない。
「俺は…高尾のこと愛してる、のだよ。」
…いつもはそんなこと絶対言わないくせに。
急にそんな、優しい声で愛してるなんて。
予想外すぎて、何も言えずにただ顔を赤くし固まる俺を見て、真ちゃんが笑った。
それは、いつもみたいな人を小馬鹿にしたような笑顔ではなくて、とても優しい笑顔で。
そんな顔で、そんな声で、お前もそうだろう?なんて言われたら頷くしかないじゃないか。


その笑顔は反則だから
(益々好きになっちゃうだろ)


end.

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甘いですか、どうですか…たまには甘いのも書こうと頑張った結果がこれです。
title:確かに恋だった

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