緑高

「ねぇ、真ちゃん知ってる?」
そう問いかけると、俺の横を歩いている真ちゃんがちらりと此方を見ながら 何をだ、と言ってきた。
俺は真ちゃんの方を見るでもなく、ただ前を見つめ、歩く速度を緩めずにそれに答えた。
「人間って、一生の内にする鼓動の回数が決まってるらしいよ。」
すると真ちゃんは、何を言っているのかさっぱり分からないとでも言いたげな表情をした。
俺は気にせずに続ける。
「俺真ちゃんといるといつもどきどきしっぱなしだから、きっと早死にしちゃうんだろうなー、なーんて。」
笑いながら真ちゃんを見上げるけれど、顔を背けられた。
「馬鹿め。」
あれ口ではそんなこと言ってるけれど、耳まで真っ赤ですよ緑間さん。
まぁそんなこと言ったら怒られちゃうから言わないんだけど、ほんとうちのエース様はツンデレなんだから。
「えー真ちゃんひどーい。」
態と可愛こぶってそう言ってやると、急に真ちゃんが此方を見た。
その目が、真っ直ぐに俺を捕らえる。
「…そんなの、俺もなのだよ。」
「は、」
何を言われてるのか分からなくて、一瞬固まる。
そんな俺を一瞥しつつ、真ちゃんが再び口を開いた。
「俺も、お前といるといつもどきどきする。俺がもしも早死にしたら死因はお前だな、高尾。」
頬が赤くなっていくのが自分でも分かった。
この人は、普段こんなこと言わないくせになんでこう…!
「…真ちゃん、不意打ち狡い。今ので確実に残りの回数いっぱい減ったよ、もう。」
そう言ってキッと睨みつけると、普段は滅多に見せないような優しい笑顔で 馬鹿め、と返された。
あぁ、もう、敵わない。


僕の心臓をあげるよ
(心臓が止まる時は、きっと君の隣で)

end.


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short shortでいっかなーと思ったんですけど、こっちで更新。

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