イヴ

※忘れられた肖像ED後のお話です。
ネタバレを含みますので、未プレイの方やネタバレ嫌な方は閲覧非推奨。
捏造だらけですが、許せる方だけどうぞ。
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………あれ?
目を開けると、すぐ目の前に大きな絵が飾られていた。
タイトルは、難しい漢字があって読めない。
何故私はこんな場所にいるんだろう。
確か、今日はお母さんとお父さんと一緒にゲルテナ展を見に美術館へ来た。
お母さん達が受付に居る間、待ちきれなくて一人で作品を見ようとして、それからの記憶がない…気付いたら、ここにいた。
…なんだろう、この絵初めて見た気がしない。
暫くぼーっと絵を眺めていたけれど、周りに人がいないことに気付いた。
少し不安になり、足早にその場を離れる。
そのスペースから出ると、人が疎らにいたので安心しつつ壁に掛けられた絵や像を見て回っていると、階段を見つけた。
お母さん達はもう受付をとっくに済ませただろう。
そこから降りて、一緒に回ろうかな。
そんなことを考えつつ階段へ向かおうとしたその時、一枚の絵が目に入った。
他の絵とは違った雰囲気の、男の人の絵。
何故だかその絵から目が離せなかった。
「忘れられた肖像」、それが絵のタイトルらしい。
何でだろう、私、この絵を見ると凄く切なくなる、泣きそうになる。
私、何か凄く大切なことを忘れている気がする。
それが何だか思い出せなくて、でもきっと私にとって本当に大切なことで、でも思い出せない。
(イヴ、イヴ)
思い出せない、思い出したいのに。
(イヴ大丈夫?怖くない?)
あんなに大切だったのに。
(きっと出れるわ、頑張りましょ。)
何で、涙が止まらない。
(アタシがついてるわ、大丈夫よ。)
この優しい声の主は誰?
頭の中で、何度も何度もよく分からない場面が浮かんでは消える。
薔薇の花、首だけのマネキン、動いて襲ってくる女の人の絵、金髪の女の子。
それと、
「……ぎゃ、りぃ?」
そうだ、私はこの男の人と、ギャリーと一緒に美術館を脱出しようとしていたんだ。
「ギャリー、ねぇ、ギャリー、」
やだ、私、こんな大切なこと何で忘れてたの?
思い出した、思い出したよ全部、本当は凄く怖かったけれどギャリーが居たから頑張れた、ねぇギャリー、何で返事をしてくれないの。
やだよギャリー、また一緒にお喋りしようよ。
「…ギャリー、」
いくら声をかけても絵が喋るわけもなくて。
短かったけれど、ギャリーと過ごした時のことを思い出す。
私、ギャリーのこと大好きだった。
何で気付かなかったんだろう。
もう伝えることは出来ないんだね。
泣いても泣いても、涙は枯れない。


なみだがきらめく
(さようなら初恋)

end.

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初Ib。
忘れられた肖像EDが一番好きです。

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