残連

※死ネタ注意です。
 1章〜2章の間の捏造。
















それは突然のことだった。
「は、今なんて?」
「だから、別れようって言ってるの〜。」
ごめんね〜、なんていつもの笑顔で言うから、それが本気なのか冗談なのか分からない。
そもそも残夏はこういったタチの悪い冗談をよく口にする奴だったから、今回のもきっと冗談なのではないか。
そんな俺の考えを視たのか、残夏はへらりと笑うと 本気、とだけ言ってきた。
百鬼夜行の一件があり、妖館の住人達は皆バラバラになってしまった。
それぞれがそれぞれの想いを胸に、行ってしまった。
そんな中、残夏だけは俺の傍にいてくれた。
なのに。
「…なんで?」
「ん〜、ボクもうすぐここ出て行くんだ。」
お前も俺の前からいなくなるんだな。
口には出さなかったけれど、百目の先祖返りである残夏には伝わったようで、少し眉を下げた困ったような笑みを浮かべた。
「ごめんね、レンレン。」
「どこに、ここを出てどこに行くんだよ。」
「それは言えないな〜。一切の連絡を絶つつもりでいるんだ。」
「え、」
言いたいことだけ言うと、残夏は じゃあね〜、と手を振り、部屋へ戻っていった。
流石に色々問い詰めたいことはあったけれど、急すぎて追う気にもならず、とりあえず自室へ戻った。

それから数日、俺達は会話らしい会話を全くせずに過ごした。
精々「おはよう」や「おやすみ」といった日常的な挨拶程度しかしていない。
残夏の方も特に何も言ってくることはなく、お互い少し気まずい思いをしていた。
そんなある日、目が覚めてすぐにラウンジへ行くと、そこには大きな荷物を持った残夏が立っていた。
「おはようレンレン、今日は早いね〜。」
「おはよー…その荷物なに?」
大方予想はついていたが、もしかしたら、という期待も込めて質問してみる。
「出て行く日、今日なんだ。」
あぁ、やっぱりそうだったか。
今日でお別れだというのに、残夏はいつもと変わらない様子で立っている。
「そっか、寂しくなるなぁ、うん。」
「ごめんね、本当はレンレンが寝てる間に出て行こうと思ったんだけど。」
「んーん、最後に会えてよかったわ。」
きっともう止められないのだろう。
だったら、せめて最後は笑顔で見送りたい。
残夏のことだから、出て行くのにも何かしらの理由があるだろうから。
「おっと、もうそろそろ行かなくちゃ。」
「ん、」
「それじゃあね、レンレン。体調には気をつけるんだよ〜。」
残夏お兄さんとの約束だよ〜☆と、いつも通りふざけてみせる残夏を見て、胸が締め付けられる。
もう、これでお別れ。
「おー、残夏も元気でな。」
精一杯の笑顔で送り出す。
玄関のドアが閉まるその瞬間、小さく残夏の声が聞こえた気がした。
「ボク、レンレンのこと大好きだよ。これからもずっと。」
ただの幻聴かもしれない。
けれど、確かにあれは、
「…、残夏っ!」
ドアを開けるけれど、そこにはすでに残夏の姿はなかった。


残夏との別れから暫く経った。
あれから自分なりに調べてみたけれど、残夏の居場所は全く分からず、半ば諦めかけていた。
そんな時、俺の元に1通の手紙が届いた。
切手は貼ってないので、直接ポストに入れられたのだろう。
「…誰から、」
差出人の住所だけでなく、名前すらも書いていなくて少し怪訝に思いつつ、封筒を裏返す。
そこには、見覚えのある字で『レンレンへ』と書かれていた。
封筒がぐしゃぐしゃになるのも気にせず、急いで便箋を取り出す。
無地のシンプルな便箋には、懐かしい残夏の字で
『レンレンへ
この手紙を君が読む頃には、ボクはもうこの世にはいないんじゃないかな。
本当は手紙も送らずに死ぬつもりだったけど、やっぱり説明しておこうって。
ボクはもうすぐ病気で死ぬんだ、これはもう何回も何回も繰り返していること。
こんな弱ったボクが傍にいるとレンレンに迷惑かけちゃうから、だから別れようって言ったんだ、ごめんね。
レンレンを嫌いになったわけじゃないよ。
ボクが伝えたかったのはそれだけ。
居場所が分からないように、切手を貼らずに届けてもらう予定です。
じゃあ、今までありがとね。
残夏お兄さんより』
と綴られていた。
「…馬鹿、残夏、」
もうこの世に残夏はいない。
二度と会えない。
別れを告げられた時よりも、ずっとずっと辛く、やるせない。
気付いたら、手紙を握り締め泣いていた。
頬から流れ落ちた涙が、手に持っている便箋を静かに濡らしていく。
じわり、じわり。
俺に別れを告げたのは、彼なりの優しさだったのだ。
確かに、彼はいつもみんなのことを一番に考えている優しい奴だった。
そんな彼を好きになったのだ。
けれど、彼は優しすぎた。
(俺は、お前が死ぬ瞬間まで傍にいてやりたかった。)
その優しさは、時に残酷。
(なんで一人で抱えてたんだよ、馬鹿。)
勝手なことを、と怒ってやりたかった。
(迷惑かどうかなんて、俺が決めることだし、そもそも迷惑だなんて思わない。)
嫌いじゃないなら最後まで傍にいろ、と怒ってやりたかった。
(ほんと馬鹿だ、俺もお前も。)
でももう残夏はいない。


(いつかお前が転生してきたなら、絶対に怒ってやる。)
(怒って、怒って、それから、)
(苦しいって言うまで、抱き締めてやる。)

それまでさよなら、残夏。

end.

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ぐだぐだになってしまった\(^o^)/


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