04

その後一度だけ、残夏と二人で話す機会があった。
その日は何故か酷く蒸し暑くて、寝苦しかったのを覚えている。
何か飲めば寝れるだろうと思い、寝巻きのまま部屋を出た。
自販機の横には椅子が置いてあるので、そこに座って飲もうと思っていたけれど既に先客がいた。
近付いて、初めてそれが残夏だと気付く。
「…よっす。」
片手を挙げて挨拶すると向こうも俺に気付いたらしく、いつもの笑顔を浮かべながら挨拶を返してきた。
「やっほー☆レンレンも何か飲み物買いに来たの?」
「そんな感じー。」
残夏の手元を見るとそこには小さなペットボトルが置いてあった。
やはり皆考えることは同じなんだな。
とりあえず自分も何か飲もうと、財布から小銭を出し自販機へ投入する。
スポーツドリンクのボタンを押すとすぐにごとんと鈍い音を立てて取り出し口へ落ちてくる。
それを取り出し、蓋を開け一口。
ここで全部飲んでいくつもりだったけれど、何となく椅子に座るのは躊躇われたので自販機の前に立ったまま残夏に再び話しかける。
「…うさ耳、」
「え?」
「うさ耳してないの、初めて見た。」
そう、残夏はいつも付けているうさ耳を外していた。
だから遠くから見た時、すぐに残夏だと気付けなかったのだ。
「流石に寝る時くらいは外すよ〜☆」
「だよね。」
そして訪れる沈黙。
居た堪れなくなり、何か言おうとしたけど先に残夏が口を開いた。
「あのさ、」
「ん?」
「あまりボクに関わらないでほしいな。」
「…え、」
予想外の台詞に、間抜けな声が出てしまう。
残夏は何も言わず、椅子から立ち上がり歩き出す。
「ちょ、待てって。」
慌てて呼び止めると、此方を向かずに残夏が立ち止まった。
「お前俺のこと嫌い、なの?」
その背中に向けて問い掛けると、くるりと残夏は此方を向いた。
「ボクは皆のこと大好きだよ〜☆勿論、レンレンも。」
いつもの笑顔で早口にそう言うと、再び踵を返し歩き出してしまった。
その言葉が本心だとは思えなくて、でもそれを聞くことは結局出来なかった。
本当、よく分からない奴。




prev bkm
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -