残連

夕飯も食べ終わり、辺りはすっかり暗くて。
なんとなく思い立って妖館の廊下をうろうろしていた、そんな時。
「レーンレン!」
背後から急に呼ばれたので、若干反応が遅れつつも おー、とか適当な返事をして振り向く。
すると、右頬をむにっと押される感触が。
「やーい、レンレン引っかかったぁ。」
犯人は案の定残夏で、子供っぽいことをするなぁと微笑ましくなる。
けらけらと楽しそうに笑いつつも、頬を押していた指を退かしてくれたのできちんと振り返る。
「いやー、引っかかったわ。そんなのやられたの、小学校ぶりよ?」
「レンレンが小学生……プフーッ想像出来ない!」
「それみんなに言われる。」
余程俺の小学校発言がツボったのか、残夏は暫く肩を小刻みに揺らしていた。
「…あー、お腹痛い。あ、そういえば、」
やっと笑いが収まったらしい残夏は、ここに来た理由をようやく思い出したらしい。
「今ね、星が凄い綺麗だから一緒に見ようよ。」
まさかそんなロマンチックなお誘いが出てくるとは思いもよらず、案外可愛い思考回路だなーと、残夏の顔を見つめる。
そんな俺の考えを視たのか、だって本当に綺麗なんだよ、と残夏は少し頬を膨らませた。
「はいはい、どこで見るの?」
いちいち可愛いな、と思いつつ残夏に場所を問うと、嬉しそうな顔をしながら ボクの部屋!と答え、歩き出す。
その後ろについて行くと、残夏が小さく鼻歌を歌ってるのが聴こえた。
「そんなに嬉しい?」
可愛いなー残夏さんは、とからかうように呟きながらほんの少しだけ下にある頭をぽんぽんと撫でる。
「レンレンさ、絶対ボクのこと子供扱いしてるでしょ。」
(口では怒ってるけど、顔にやけてますよ残夏さん。)


***


「おおー…」
必要最低限の家具以外、無駄なものは何もないシンプルな部屋の中。
ベッドに腰掛けながら窓の外を眺めると、街の灯りに負けないくらいきらきらと輝く星達。
「どう、綺麗でしょ〜?」
「うん、綺麗。ちゃんと星見たの久々だわ。」
暫くの間、お互い何も言わずに星だけを見ていた。
一人で見たってここまで感動はしないだろう。
やっぱ傍に誰かがいると違うんだな。
ふと横を見ると、残夏の横顔が月明かりに照らされていた。
(あ、綺麗。)
残夏、と呼びかけようと口を開くのと同時に残夏が小さく あっ、と叫んだ。
「レンレン、今見た?流れ星!」
「うっそ、見てない。」
「あーあ、残念。でもボク、願い事し忘れたから次見たらちゃんとお願いしよーっと。」
流れ星が流れてる間に3回願うと叶うっていうあれか。
本当に叶うのか分からないけれど、もしも見れたら一応お願いしてみるか。
それまで、先程から襲ってくるこの眠気に勝てるかが問題なんだけど。


***


ボクが流れ星探しに没頭してから結構時間が経った。
レンレンは何してるんだろ、と横を見ると、壁にもたれつつ寝ていた…道理で静かなわけだ。
その寝顔を見ていたら今までの幸せな気持ちが消え、無性に泣きたくなった。
(レンレン、レンレン。)
小さく寝息を立てる彼の頬をやんわりと撫でる。
(レンレン、大好き。)
一体ボクは、あと何回君に好きと伝えられるのだろうか。
自分の体が限界に近付いてきているのは、よく分かってる。
きっと彼を残して死んでしまうことも、分かってる。
一番辛いのは、君。
(まさかこんなに大切な存在になるなんて。)
ぼやけてきた視界を晴らすように、涙がこぼれ落ちない様に、星空を見上げる。
ボクはなんてちっぽけなのだろう。
(君一人、守れやしない。)
徐々にはっきりとしていく視界の中、きらりとひとつの星が流れ落ちるのを見た。
(お星様、ボクはレンレンと一緒に居れたらもう何もいらない。)
(叶わないなんて分かってる、でも。)



星降る夜に
君との永遠を願う。


(せめて最後まで、彼の傍に居させてください。)



end.


--------------
くろみつ様へ相互記念!
最初甘々な残連を書こうとしたのにどうしてこうなった\(^o^)/
お持ち帰りはくろみつ様のみ。


prev bkm next
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -