臨正

一日の終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。
やっと終わったか、と帰り支度を始める。
今日も一日疲れた…まぁ、授業中は大半寝ていたんだけれど。
帝人と杏里の元を訪ねると、今日は担任に頼まれた仕事があるから先に帰ってて、と言われた。
ちぇー、なんだよ、と少し拗ねてみると、帝人から 可愛くないよ、という容赦ないツッコミを頂く。
「帝人、相変わらず冷たい…まぁいいや、じゃあ俺帰るわ。じゃあな〜!」
「ん…あ、正臣待って!」
下駄箱へ向かおうとする俺を帝人が引き止めた。
「正臣、今日誕生日でしょ?園原さんと一緒にプレゼント買ったんだ。」
「お誕生日おめでとうございます、紀田君。」
毎日同じように過ごすだけだから忘れてたけど、そういえば今日誕生日か。
「まじで?ありがとーさっすが杏里!」
「ちょっと正臣僕は?」
「冗談だって。帝人もありがとな!」
「もう…はい、これ。」
呆れた様に眉を少し下げた帝人に、綺麗にラッピングされた包みをもらう。
もう一度お礼を言おうとした時に、遠くから2人を呼ぶ声がした。
「あっ先生が呼んでる。ごめん正臣、もう行くね!」
「紀田君、また明日。」
「おう、またな!」
2人と別れ、下駄箱へ。
周りには人影がほとんどなく、聞こえる音といったらグラウンドの方からの運動部の掛け声だけ。
特に急ぎの用事もないので、ゆっくりと正門へ向けて歩き出す。
門を出て、さてこの後どうしようかと考えていたら後ろから声をかけられた。
「やぁ、紀田君。」
「…げ、」
そこには、にやついた顔をした折原臨也が立っていた。
「げ、って何さ。酷いなぁ。」
「何の用っすか?帰りたいんすけど。」
この男を相手にするのはやたら疲れるので、さっさとこの場を離れたい。
そんな気持ちを知ってか知らずか、目の前の男は わぁつれないなぁ、などと笑っている。
「今日は別に何か企んでるわけじゃないんだって。」
「いつもは企んでるんすか?」
「手厳しいなぁ。まぁ、とにかく聞いてよ。」
話を聞くだけ聞いてなるべく早く帰ろうそうしよう。
「今日さ、紀田君誕生日なんでしょ?」
「そうっすけど、」
何故知ってる…あ、この人一応情報屋か。
「だから今日はそんな紀田君にプレゼントを持ってきたよ。」
「は?」
突然すぎて素っ頓狂な声が出てしまった。
何でそんな驚くの、と笑う臨也さんがとてもうざい。
「プレゼントとか…何が狙いなんすか。」
「俺が何かあげる時、いつも裏があるわけじゃないよ。」
そう言っているけれど、怪しい凄い怪しい…やっぱ日頃の行いって重要だと思う。
「ただ俺が祝いたいだけ…はい、誕生日おめでとう紀田君。」
「…どうも。」
臨也さんから渡された包みには、有名ブランドの名前が印刷されていて、思わず落としそうになる。
「ちょ、臨也さんこのブランドって高いんじゃ…!」
貰えませんよ、そんな高価なの、と返そうとしたのだけれど、やんわりと押し返されてしまう。
「いいんだよ、紀田君に似合いそうだと思って買ったんだし。情報屋の仕事で結構儲かってるしね。」
なんか、凄い大人だ…ちょっと腹立つ。
ここでまた返すのもアレなので、素直に受け取っておく。
「…じゃあ、ありがとうございます。」
「ん、どういたしまして。」
そう言って嬉しそうに笑うもんだから、本当はいい人なのかもしれない、とかそんなことを思ってしまった。
「お礼は紀田君でいいよ、なんて。」
…前言撤回、やっぱこの人相当うざい。


end.

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今更\(^o^)/
いや忘れてた訳じゃなくてですね、うん。
正臣おめでとうごめん!
一応お持ち帰り自由です。


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