高緑

今日はたまたま部活がオフで、お互い特に用事もない。
それじゃあ一緒に帰ろうか、なんて言わなくても、あいつは当然のように俺を呼んで、遅いのだよ、なんて言ってくる。
別に部活がある時だってそんな感じだけど、オフの日でも一緒に帰ってくれるんだなーってちょっと嬉しくなった。
歩幅の大きい真ちゃんだけど、二人並んで歩くときはちゃんと俺の歩幅に合わせてくれる。
そんなさり気ない優しさに、いつもきゅんきゅんしっぱなしな俺は宛ら乙女のようで少し笑えた。
ぺたんこな鞄をゆらゆらと揺らしながら他愛のない会話を繰り広げ、通学路である閑静な住宅街を歩く。
隣を歩く真ちゃんは、そんな俺の話に相槌を打ちながらお汁粉を啜る。
昼間は本当に10月かよってくらい太陽が照っていて暑かったのに、夕方は秋らしくすっかり冷え込んでいて、真ちゃんが飲んでいるお汁粉ももう冷たいものから温かいものへ変えたらしい。
たまにふーふーと缶へ息を吹きかける真ちゃんが可愛かった。
そんな真ちゃんをぼんやり見つめていると突然強い風が吹き、思わずぶるりと震える。
「やばい超寒い!」
「そうか?」
腕を摩る俺を、きょとんとした顔で見つめる真ちゃん。
どうやら本当に寒くないらしい。
今の風、結構冷たかったけどな。
「そりゃあ真ちゃんはそれ飲んでるから!」
俺がお汁粉を指差すと、あぁ、と頷きながらこれみよがしに一口啜る。
ガキかよ!
「いいなー真ちゃん。ねぇ一口頂戴?」
真ちゃんに以前同じようなことを聞いてみたけれど、その時は確かきっぱり断られた気がする。
きっと今回も断られるんだろうって分かってはいるけれど、寒さに耐え切れず一応聞いてみた。
真ちゃんは一瞬困ったような顔をして、俺とお汁粉を交互に見ている。
そんな真ちゃんに、ダメ押しのように言ってみた。
「俺、このままだと寒くて風邪引いちゃう…」
「…ほら。」
2,3回瞬きをした後、すぐに真ちゃんはお汁粉の缶を俺に差し出した。
まさか本当に貰えるとは思わなくて、え、あ…と間抜けな声を出してしまう。
「飲まないのか?」
「や、飲む飲む!ありがと真ちゃん!」
慌てて缶を受け取り、一口飲んで返す。
よく考えたら今の間接キスだよなー。
今更顔が赤くなる。
真ちゃんは全く気にしていないのか、それとも気付いてないのか(きっと後者だろう)、平然とした態度だ。
「ほんとにくれると思わなかったわ、俺。」
そう本音を漏らすと、何故か鼻で笑われた。
俺何かおかしいこと言った?
「お前に風邪を引かれては困るからな。」
「それは、部活に支障が出るから?それとも、俺が好きだから、とか?」
勿論前者なのだろう。
俺以外に真ちゃんを活かせるプレイが出来る人はいないし、うん。
真ちゃんをちらりと見るとパチリと目が合ったが、反射的に反らしてしまう。
「……そんなの、後者に決まってるだろう。」
確かに、そう、真ちゃんの口から。
あの真ちゃんが。
「え、ちょ、本当?」
思わず聞き返したけれど、照れているのか 知らん、とだけ返されてしまう。
それでも俺は凄く嬉しくて、泣きそうで、好きなのは俺だけじゃなかったんだって、ちゃんと好かれてるんだって分かって、嬉しくて。
真ちゃんは耳まで真っ赤で、それは夕焼けの所為じゃないんだろうなぁ。
とかいう俺の顔もきっと、真っ赤だ。
「ね、真ちゃん

それはもう愛だよ
いっやー、愛されてるね俺!
馬鹿を言うな。
照れんなって真ちゃん。



end.

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高緑の日おめでとう!!!!!!!
一応フリーです。
title:自慰

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