残連

「今日はボクがレンレンにご飯作ってあげる〜☆」
俺が部屋のドアを開けるなりそう残夏が唐突に言い出した。
既に買い物は済ませていたらしく、その両手には大きな袋。
いまいち事態が飲み込めずにただ突っ立っていると、残夏は勝手に俺の脇をすり抜け部屋へと入っていく。
袋をキッチンへ持っていくと、残夏は いいって言うまで見ちゃダメだよ、と言って意味深な笑みを見せてきた。
簡易キッチンなんて便利なものが各部屋に設置されてはいるけれど、俺は料理なんて出来ないし、飲み物だって自販機で購入するからそこは新品同様だ。
そんなんだから勿論、料理に必要な包丁やら鍋やらの類も置いていない。
その旨を残夏に伝えると、2つある袋の内1つをガサリと持ち上げ中身を見せてきた。
「そんなの分かってるって。だからちゃんと持ってきたよ。」
「流石残夏さん。」

あれから約1時間程経ち、部屋の中にはもうすっかりいい匂いが充満していて、元々昼飯もロクに食っておらず空腹気味だった俺は耐え切れずに何度目か分からない疑問を残夏へとぶつける。
「ねーまだ?」
残夏は呆れ気味に笑いながら、これまた何度目か分からない返事をする。
「もうちょっとだってば。」
なんかこういうやり取り、新婚さんみたいだなーなんて柄にもないことをぼんやりと考えていると、キッチンの方から笑い声が聞こえた。
どうやら俺の心を視たらしい残夏が、片手におたまを持ちつつ肩を震わせている。
「やだーレンレン可愛い〜!」
まさか視られたなんて思わなくて、少し恥ずかしかった。
「視んなよ〜俺照れちゃう。」
「ごめんごめん、あとちょっとで出来るから待っててね、アナタ☆」
「おー楽しみだなぁお前の手料理。」
突然始まった新婚ごっこにノってやると、残夏は嬉しそうに笑った。
その笑顔が随分と幸せそうだったから、こっちまで笑顔になる。
「まぁ夜はボクが旦那ポジションなんだけどね☆」
「台無しだよ。」
それから10分程して漸く完成したらしく、キッチンから部屋の中央に置かれた簡易テーブルへ次々に料理が運ばれてきた。
その出来栄えは、レストランで出してもいいんじゃないかってくらい見事なもので、思わず感嘆の声が漏れる。
「おぉ…すげぇ美味そう。」
「んふふ、ありがと〜☆」
今までも十分空腹だったけど、料理を目の前にするとより一層の空腹感が俺を襲う。
腹の虫が小さく鳴り、己の空腹を主張する。
そんな俺の様子に気付いたのか、残夏が どうぞ、と言いながら箸を渡してきた。
「それじゃ、いただきまーす。」
一口含んだそれは見た目通りの美味しさで、美味しい美味しい、と在り来りな言葉を連呼しつつ一向掻き込んだ。

「…いやぁ、食った食った。」
「凄い食べっぷりだったね、レンレン。そんなにお腹空いてたの?」
食器を洗いながら、ソファに寝そべる俺を見てクスクス笑う残夏。
「超空いてた。それに、美味かったからなぁ。」
だらだらしながら締りのない声で返事をすると、また残夏が笑った。
いつもの何考えてるか分かんない笑顔も好きだけど、こうやって俺だけに見せてくれるような笑顔も好きだなぁ。
とかなんとか考えていたら、突然ガシャンと大きな音が響いた。
驚きつつキッチンを見ると、どうやら残夏が重ねていた食器を崩したらしい。
「おいおい大丈夫かー。」
「レンレンってほんとさ…」
「え、何?俺なんかした?」
「…いやなんでもない。」
心なしか顔が赤い気がする。
もしかして熱かもしれない、珍しいな残夏が体調不良なんて。
「顔赤いぞ、熱なんじゃねーの?」
「大丈夫違うから…」
皿洗いが終了したらしい残夏がこちらへ近付いてきた。
お疲れーと相変わらずだらけた姿勢で言うと残夏は、今から癒してもらうから、という謎の台詞と共に俺を持ち上げた(というか、所謂お姫様だっこをされた)。
「ちょ、残夏さん?」
「レンレンが可愛すぎるのが悪いと思うんだ☆」
この状況で語尾に☆は逆に怖い。
じたばたしてみたけれど、見た目はひょろい癖に意外にも力強くて降りるのは諦めた。
「とりあえずさ、レンレン食べたいからベッド行こうね。」
食べたいっていうのはやっぱそういう意味なんだろうなぁ。
まぁご飯作ってもらったし、1回くらいなら…
「1回で済むと思う?」
そうだね思わないね。
恐らく朝まで続くのだろうと想像したら既に疲れてきたので、やけに上機嫌の残夏に身を任せ目を閉じた。


愛をぱくり

end.

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支離滅裂すぎる…!
10000hit企画、カリンさまリクの「残夏が反ノ塚に手料理を作る話」です。
リクエストありがとうございました(´▽`)
お持ち帰りはカリンさまのみでお願いします。

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