残連

今日は珍しく朝早く目が覚めた。
特にすることもないので部屋に篭って夏休みの宿題をすることにしよう。
世の中には大きく分けてこつこつと計画的に宿題を消化していくタイプの人間と、夏休み最終日になって計画性のない自分を呪いつつ徹夜で宿題を終わらせるタイプの人間の2種類いる。
俺は毎年後者で、酷い時には提出期限を過ぎても宿題が終わらずに、そのままうやむやになったり…。
流石に高3にもなってこれじゃあまずいだろう。
今はまだ夏休みが始まったばっかだけど、頭の出来が元々あまりよくないので今からやらないと終わる気がしない。
折角時間が沢山あるんだ、今日少しでも多く進めておこう。

まずは一番厄介な数学に手をつける。
面倒臭いけれど、後回しにすると本当にやる気が失せるので最初にやるべきだと判断した。
問題集を開くと、目の前に広がる沢山の数字や記号。
あ、駄目だ、もうギブアップ。
一問目から手こずるとは思わなかった。
机の上のブックスタンドに無造作に立て掛けられた参考書を手に取る。
参考書と問題集、交互に睨めっこしつつ何とか解いていく。
一問解くと、後は似たような問題が暫く続いた。
これならいけそうだ、そう安堵の溜息を漏らしたその時。
「レンレンいるー?」
ドアをノックする音と同時に聞こえた声。
何てタイミングの悪い奴だろうか。
仕方なくドアへ向かう。
「いるいるー。」
返事をしつつドアを開けると、そこにはにやにやした残夏が立っていた。
「やっほー、遊びに来たよ☆」
帰れとも言えないので、部屋に上げる。
もう何回も来ているので、残夏は案内しなくても勝手に歩いて行った。
先を行く残夏について行くと、彼は机の上に置かれた問題集に気付いたらしい。
「あれ、レンレン宿題やってたの?えらーい☆」
「そうそう、俺いい子だからね。」
意外だねー、と笑いながら残夏は問題集をぺらぺらと捲る。
そういえばこいつ、俺よりも年上じゃないか。
代わりにやってくれないかなー。
「ダーメ、自力でやんなきゃ意味ないでしょ?」
あ、視たんですかやっぱ駄目か。
「じゃあ俺、これやるから残夏は適当にくつろいでて。」
そう言いながら残夏の手から問題集を取り返すと、彼は俺の向かいに座りながら はーい、と返事をした。
よし、再開するか。

暫くは俺が回答を書き込むシャーペンと紙の擦れる音と、参考書を捲る音しかしなかった。
残夏はずっと此方を見てにこにこしている。
暇じゃないのかなーと思ったけれど、まぁ楽しそうだしいっか。
もう問題集のページは丁度半分まで来ている。
これは今日中に数学終わるんじゃないか。
そう考えるとよりやる気が出た。
「…あー、もう無理!」
急に残夏が大きな声を出しつつ机に突っ伏した。
驚きつつ、何が、と聞き返す。
「レンレン不足で死んじゃう。」
「は、」
顔は伏せたままでぽつりと呟かれた台詞には、いつもより元気がなかった。
「折角レンレン夏休みで、毎日一緒にいれると思ったのにぃ…」
あー、やっぱり暇だったか。
そりゃそうだよな、人が問題解いてるの見て楽しい奴なんかそういないだろう。
「ごめん、でもあと半分で終わるんだけど…」
「やだ、耐えれない。」
机から顔を上げつつ、即答される。
あれちょっと涙目じゃない、この人。
「だってレンレンが構ってくれないんだもん。兎は寂しいと死んじゃうんだよ、しくしく…。」
「ごめんって。」
「…宿題、後でボクも手伝う。」
「え、」
さっきは自分でやんないと意味がないとか言ったのに。
予想外の申し出に少し驚く。
「手伝うから、だから、今日はボクに構ってよ。」
…いやぁ、参った。
こんな誘い、乗るしかないでしょ。


ずるくないですか
(そんなこと言われたら、断れるわけない)


end.

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5000hit企画、濃霧さまリクの残連です。
反ノ塚の宿題事情とか色々捏造しました。
リクエストありがとうございました!
お持ち帰りは濃霧さまのみでお願いします。

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