忘れる(宮高)

振られるの続きです。
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高尾が緑間に振られる瞬間を、見てしまった。
故意に、とかそんなんじゃなくて、本当に偶然。
そもそも体育館で告るあいつも悪いよな、人が来る可能性とか考えなかったのかよ。
とは言え、俺にとっては願ってもないチャンスなわけで。
振られて傷心な所につけ込む様で少し卑怯だけど、それでも。
「高尾」
呼びかけると、大袈裟な程肩をびくつかせた。
なんすか、と返事はあったものの、こっちを一向に見ようとしない。
「高尾」
「…宮地サン、今はちょっとほっといてください。」
それは無理に明るく振舞おうとしてるのがバレバレな声色で。
意地でも此方を向かないつもりだろうか。
まぁ大方泣き顔を俺に見られたくないのだろう。
俺は静かに高尾へと近寄ると、後ろからそっと抱き締めた。
「ちょ、宮地さ」
「好きなんだけど。」
多分こいつが入部してきてから、今日までずっと。
高尾は腕の中でじたばたしていたけれど、抱き締める力を強めたら大人しくなった。
「…宮地サン、何で今」
「分かってる、ズルいよなこんなの。それでもさ、」
「……」
「俺が、忘れさせてやるから。」
緑間なんて早く諦めろよ、高尾。
なぁ。
「…本当に、忘れさせてくれるんすか。」
「あぁ」
高尾の手が、そっと俺の腕に触れた。


忘れる
(全部忘れる程、俺に溺れてしまえばいい)
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テーマ「人外ファンタジー」
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