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俺には悪癖がある。
友達が好きになった人を好きになる。
今まで好きになった美咲ちゃんや由香ちゃんや亜美ちゃん。
みんな友達が好きになった人、もしくは友達の彼女。
別に付き合いたいわけじゃないけど、どうしても目で追ってしまう。
んで、友達の興味がなくなった頃にそんな気持ちも無くなって。

でも、そんなのトラブルの元になるだろ?
俺は別に友達の幸せを奪いたいだけじゃない。
ただ、好きな人を眺めていたいだけ。
だから俺は無い脳みそほじくり回して考えたわけだ。
どうしたら皆と波風立てずに俺の恋心がなくなるか。




「今日も亜美ちゃん可愛かったなー」
「彼氏いんだろ」
「くそうっ、おのれイケメン!」
「俺はタイプだけど?」
「ぐはっ来たよホモめ!さっきもずっとあっちの方見てたろ!」
「…ん。眼福眼福」
「はっ、いくらホモだからって俺には手を出すなよ!?」
「俺のタイプじゃねーよ」

…これが試行錯誤の末に生み出した考え。
俺はホモ。なんで女の子には興味ありませーん。
え、お前の好きな子見てた?違う違う、その隣の彼氏やらイケメンやら見てたの。なんて。

最初はバレたり気持ち悪がられたりしないかなぁとか心配だったけど。どうやらその心配も無意味だったみたい。
基本的に友達の前でエロ本はゲイものしかみてないからかバレないし(ベッドの下はノーマルの宝庫だけどね)、今までの俺が築きあげた信頼は、その程度のカミングアウトじゃびくともしなかったらしい(最初は警戒心たっぷりの視線で見られたけど。あと俺が近付くとケツ抑えるやつらが多かったけど)。

そんな訳で、今は友達の好きな亜美ちゃんが大好きなわけだけど、誰にもばれずに彼女を見ることが出来て幸せです。
俺の悪癖いつかはどうにかしないといけないんだけどね。
このままだったらホモになるか友達に刺されるかのどっちかな恋愛しか出来なさそうだし。

「つーかさ、その彼氏こっちの方見てなかった?」
「え?」

気付かなかった。
俺、なんだかんだで亜美ちゃんの方しか見てなかったし。

「なんかチラチラお前の方見てた。脈有りなんじゃね?」
「はぁ?嫌だよ。いくらイケメンでも俺の理想は5歳くらいは年上」
「…わかんねー…おまえの好みがわかんねー…」

そう言ってがっくり項垂れる友達。
そうだよね、俺も自分の好きな男とか想像できねーもん。
でも、正直最近亜美ちゃん眺めるのも飽きてきたな…。

「つかさぁ、最近由香里ちゃん可愛くね」

確かに。清純派、って感じが特に。
あれ、でもいつの間に俺由香里ちゃんのこと見てたんだろ。

「女に興味なしっ」
「うげ」
「まぁかわいんじゃね?」

なんだか由香里ちゃんのこと考えたらドキドキしてきた。
これってもしかして、

「俺、今は亜美ちゃんより由香里ちゃんのほうが好きかも知んない」
「ふーん」

俺もだよ。
さようなら亜美ちゃん。こんにちは由香里ちゃん。




「何の用?」

俺は今、屋上に呼び出されていた。
何故か亜美ちゃんの元彼のイケメンに。
…そう、元彼。今は由香里ちゃんの今彼だ。イケメンしね。

「いや…お前さ、俺のこと見てたろ?」

見てねーよ。俺が見てたのは可愛い女の子だよ。
あ、でもカモフラージュでちょっとは見てたかも知んないけど。

「見てたかもね」
「お前さ、俺のこと好きなの?」
「はぁ!?」

おっと、つい素が出てしまった。
しかし…ねぇだろ。
俺ホモじゃねえもん。
あ、いや、ホモのフリはしてるけど。

「あー…俺が見てて不快にさせたんなら謝るわ。でも俺イケメンは好きだけどもうちょっと年上がタイプだし…」
「イケメンって…俺のこと?…嬉しい」

話聞いてないだろこいつ。
つか、え、嬉しいって何?ホモに言われて嬉しいとかどんだけナルシスト?

「俺、お前が見てくるたびにドキドキしてた。気付いたらお前のことばっか考えてる」

…ん?なんだか話がおかしな方に行ってないか?

「俺…お前が好き」

なに、これ。

「俺と、付き合ってほしいんだ」

…だれか嘘だと言ってくれ。




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