企画 | ナノ




噛みつく

僕をヤな奴にさせないで。
大好きで大好きで、君しか見えていなかったのに。
それなのに君は、他に眼が行っちゃうんだね。

「ねぇ、今日遊ぼう」
「今日はユキちゃんと遊ぶんだー」

ごめんねーと笑う彼。
あははなんて笑って、馬鹿にしてるの?
僕は君のおもちゃでもいいと思ってたんだけど、やっぱり違うみたい。
本音は僕の思い通りになって欲しい。
でも、そうしたら君じゃなくなっちゃうのも分かってるわけで。
こういうのを、ジレンマって言うんだよね。

僕が他の人と違うのは、よく分かってるんだ。
君にぎゅっとされたら嬉しいし、お遊びで歯型、痣なんてくらったら発狂しちゃう。
でも、君にとったら違うんだよね。
僕は君にとってその他大勢の一人に過ぎない。
僕の代わりは、いくらでも居るんだよね。

君にだけそう思われてるのが悔しくって、僕も他にあっちこっち遊んだこともあるけどさ。
だめだった。
君に距離を置かれるだけだった。
可愛さ余って憎さ100倍なんていうけどさ。
本当にそうだよ。
くやしくってくやしくって、僕には君しかいない事を思い知らされて。
だから、僕も思い知らせてあげるんだ。

君には僕だけ。




「なんのつもり?」
「んー、誘拐?」

だからね、君を僕の部屋に閉じ込めました。

「見て見て、部屋片付けたんだよー。引越ししたあと、一人で」

君は手伝ってくれなかったものね。
新居には君しか入れたくなくて、引越しのお兄さん方は仕方ないけれど、それでも、荷物は独りで片付けたんだ。
僕の部屋も、君の部屋も、全部。

「喜んでくれた?」

にっこり笑いかけて見るけれど、君の返答はあまりよろしくないみたい。
いいんだよ。それでも。
自己満足だって分かってるんだから。

「出せよ変態」
「もー変態って言わないでよ。嬉しいなぁ」

僕って実はMっけがあるのかな。
強気な君に会って気付いた事だけど。
まぁ、僕がしてる事に君が反応してくれるからこそ嬉しいのだけど。

「ねぇ、最近全然遊んでくれなかったじゃない?だから、ね、色々鬱憤とか溜まってるんだ」

もう破裂しそうなくらいに。

「だから、選んで?このまま僕に殺されて、僕のお腹に入るか剥製になるか。それとも僕と死ぬまで一緒に暮らすか」

カニバリズムでもお人形でも僕は良いのだけれど。
でも、せっかくお部屋を作ったものね。

僕の質問にややあって、さらに悪態を吐く彼の、喉に噛み付いた。

いつものお返し。
別に僕はこのまま噛み千切っても良いのだけれど。
素直になるなら、今のうちだと優しく嗤った。






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