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渇いたのどに

あーもうめんどくさい。

「ねぇ、今日遊ぼう」
「今日はユキちゃんと遊ぶんだー」

ごめんねーと笑って、お断り。
最近距離を置いてるこいつ。
喋ってると面倒な事この上ない。

最初はさぁ、まぁ、普通だと思ってた。
でも、なんだか違う事に気付いたのは大分前から。

男同士のクソ面白くない王様ゲームでは名指しでハグを求められて、やってあげたらまぁ、デレデレのキモい顔。美形顔なだけに引いた。
俺の酒癖が悪いと知っておきながらこっそり酒を盛られて、噛み癖が出たせいで歯型を付けたら発狂モノだったし。

気持ち悪くて距離をとった頃、遊び始めたこいつの軽さにもう嫌悪感しか抱かなくなったところで。
本気でこいつを避け始めたのがいけなかったのか。




「なんのつもり?」
「んー、誘拐?」

だからキモイんだよ。
口に出すと彼は嬉しそうに笑う、から余計キモさが増した。

今日は、珍しくこいつと映画を見に行った。
本当はこいつと二人きりなんて嫌だったけど、なんかの景品で当たった映画のチケットは俺が見たかったホラー映画。
以前はよく2人で見に行ってたし、俺の友達にはホラー映画を見れる友人が居ない。
金も浮くし、映画見るくらいならまぁいっか。なんて。
その後、家に来てとぐずるこいつにドン引きしてたらばちり。
スタンガンなんていつ買ったんだよこの野郎なんてツッコミはもうめんどくさいことこの上ない。

「見て見て、部屋片付けたんだよー。引越ししたあと、一人で。喜んでくれた?」
「あー。お疲れ良かったねー
それよりこの手錠外せ」

手についた拘束具を見せ付けるようにすると、それに連なる鎖がじゃらリ。
音にすらイラついて、にやにや笑うこいつを睨み付ける。

「出せよ変態」
「もー変態って言わないでよ。嬉しいなぁ」
「きもい」

見下すように言ってやれば、頬を染めて嬉しそう。
うんきもい、つか死んでほしい俺のために。

「ねぇ、最近全然遊んでくれなかったじゃない?だから、ね、色々鬱憤とか溜まってるんだ。…もう破裂しそうなくらいに」

破裂、と言う言葉を聴いて、さっき見たホラー映画を思い出した。
スプラッタで飛び散る血と、血が滴る食事を無邪気にほおばる子供たち。
なんか、本当に気分が悪くなってきた。

「だから、選んで?このまま僕に殺されて、僕のお腹に入るか剥製になるか。それとも僕と死ぬまで一緒に暮らすか」
「…カニバリズムなんて、また、影響受けやすい悪い癖だろ」

吐き捨てるように毒づくけれど…思ったよりも緊張してるのだろうか。
喉が、からから。
分かってる。
いろんな意味で、影響受けやすくて悪ノリしやすいこいつが本気だって事くらい。
睨み付ける俺に笑いかけるその顔の、八重歯が印象的だった。



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