腐った兎 | ナノ


3


そんな生活にも変化が現われた
始まりは、季節外れの転校生。

『瓶底眼鏡にカツラ!?なにそれすごい王道くんじゃない!(今時そんな子いんのね二次元の中で生きろよ)』
「…心の声だだ漏れだよ、よーこちゃん。それにそれがどういう事か分かってる?」

溜息を吐いて言えば。

『…ああ、そゆ事』

従姉妹のよーこちゃん、改め相楽羊子(さがら ようこ)は納得した様に返事をした。

そう、転入生。
時季外れのソイツは、今時の高校生にあるまじき姿をしていた。
そしてそれは最悪な事にオレが普段制裁と言う名のリンチをしてる時の恰好と瓜二つだった訳だ。

「まぁ、オレが出没し始めた時季と若干ズレてるからなぁ。風紀は繋がりあるのかもとか言ってるけど正直真実味に掛ける」
『でも臆病なゆーとくんは気になっちゃう訳だ(このチキン野郎)』
「うん」

この際心の声は無視して正直に言えば、彼女は軽く溜息を吐いた。

『んー…そこの学園が王道だとは言え、転入生が来るとは流石に思ってなかったからなぁ…そんなアホ丸出しの恰好すればバレないだろうとは思ったけど』
「だよね。オレも思った。よーこちゃんが天使に見えた」
『正直あんたがそんな中二丸出しの事してるってのも本気にしてなかったし』

…心の声の毒舌が表面に溢れてますよおねーさん。

『転入生は無視して今まで通りこっそりひっそりやっちゃってってのが理想だけど、私的にはその転入生が問題起こして制裁受けそうな気もするのよねー』
「わ、すごいね半分当たってるよ。副会長が彼を気に入ったとか言ってたしなんか厄介な事起こしそう」
『…副会長の笑顔がキモいとか言って?』
「うん、そんな感じ」

答えれば、はーっと盛大な溜息。

『もしかしてその子にもう会った?』
「え?ううん。副会長が面白かったし夕食の時に食堂に除きに行こうかななんて思った」
『駄目』

間髪入れずに否定の声。

「どうして?」
『その転入生はね、王道くんなの。王道くんは美形ホイホイなの。無意識に美形を侍らせちゃうの』
「…なにそれ?」
『いいから黙って聞いて。ゆーとくんはね?イカれた中二属性とは言え綺麗な顔してるんだから王道くんは無意識にあんたを自分のテリトリーに入れちゃうの』
「(…絶対突っ込まないぞー)」
『そうしたらね、王道くんはゆーとのやってる事を見抜いちゃうの』
「え、そんなの嫌」
『だったら、王道くんには絶対近付いちゃ駄目』
「…うん」

大人しく聞き入れる事にした。
よーこちゃんには今までも何度か助けて貰った事がある。
毒舌でたまに怖い彼女だけど、言う事は9割正しい事だもん。特に男同士のトラブルについて。

『ゆーとくんの大好きな趣味も、暫くは控えなさい』
「え」
『…状況を逐一教えて。やっても良い時は教えるから(生王道知りたいし)』
「…うん」
『あと、もしかしたら…』
「ん?」

何かを言いかけたよーこちゃんは暫く何か言おうとして、それでも『なんでもない。バレない様に気をつけてね』と締めくくった。

「ごめんねよーこちゃん。オレのくだらない趣味に付き合わせて」
『別に良いよ(腐女子向けでもハードレベルなゲイビ見てる私も人の事言えないし)』

……ま、いっか。

「ありがとう。ばいばいよーこちゃん。あいしてるう」
『私もあいしてるう。(萌えの次にね)
じゃ』

それでよーこちゃんとの話は終わり。
ゆっくり携帯を机に置いて、オレはうなだれた。
怖いよ、転入生。

そんなオレが「アンチだったら独りになっちゃうかもなーんて、寂しがりなうさぎちゃんのゆーとくんには言えないよねー(ヘタレだし)」と、よーこちゃんが呟いてたなんて知るはず無いんだけど。

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