腐った兎 | ナノ
14
数日振りに見る会長は相変わらず不遜な態度。
でも、目の下には隈。
会長が仕事を殆ど請け負ってるというのはあながち間違いでも無そうだなぁ、なんて人事の様に考えた。
「久しぶりかいちょー」
にへら、と笑いかければどことなく面白くなさそうな顔で視線をそらされる。
なんだかなぁ…。
「でもなぁ、素を出せなんて久しぶりに言われたよ本当」
そんな事を言って来るのは従姉妹の羊子ちゃんかトラ兄ぐらいだったもんなぁ…。
まぁ、羊子ちゃんは途中から「チャラ会計萌え!」とかなんだで何も言わなくなったけど。
皆どうせ他人なんかどうでもいい。
人間、自分が良ければ全て良し。でしょ?
オレの事なんて、結局は外ヅラしか見ていない子しか周りに居なかったから…そう考えるとじんわりと胸に温かさが広がった。
「ありがとうねぇ会長」
なんだかまだ、がんばれる気がする。
「じゃあついでに、会長にお願い」
「?何だ?」
「今日の夜、オレと一緒に居てよ」
「…っ、は?」
「何言ってる相楽」
ポカンとした会長に、一気にしかめっ面になった委員長。
あっは。
なんか勘違いしてるみたいだけど面白い。
「今日さ。…て言うか暫く、オレ部屋に帰りたくないんだよねぇ」
原因は言わずもがな龍硫くん。
もうね、彼に対しては警戒心ビンビンだから、正直言うと暫く会いたくない。
『相楽さんにもやりたい事があるんでしょう?』なんて、あの言葉の真意は分からないんだけどさぁ…。
考えても見れば不思議じゃないよね。
同室なんだから龍硫くんがオレのやってるイケナイ事に気付いてるとしても。
まぁ、確証なんて無いんだけど。
それでもなんだが怖くて。
自室にほとんど閉じ込められていたせいもあるんだろう。
少なくとも今、彼の所には帰りたくなかった。
「俺の前で夜の誘い、か?」
頭を抱えてる委員長が面白い。
でも怖い。
変な顔の会長も含めてどうしようかなぁなんて考えていると妙案が浮かんだ。
「じゃあさ、委員長も来て3人でお泊りは?」
確か会長だけは特権で1人部屋だった筈だから、2人ぐらい入っても大丈夫だと思うんだよねぇ。
そう考えたけど。
「……」
「……」
ものの見事に押し黙る会長と委員長。
仏頂面と困惑面。
会長と委員長って何だかんだで似てるなぁ。
隠れ真面目と全部真面目。
オラオラとスパルタ。
会長が委員長で委員長が会長で…なんかどっちがどっちか分からなくなりそう。
「…悪いが、俺にはする事がある」
ややあって会長がそう言った。
「する事?生徒会の仕事?」
「…ああ」
「…手伝うよ?」
「おい」
オレと会長のやり取りに委員長が口を挟む。
「風紀としては、相楽が仕事をするのは…」
「部外者は引っ込んでなよ」
睨みつける付ける様に委員長を見れば言葉を詰まらせている。
…なんだかなー…。
「委員長は何なの?オレにぐちぐち謝って来たけどさぁ、あれって自分の罪悪感減らしたくて言っただけ?」
「…俺は…別に、」
「本当にあれが反省してたんならさぁ…今、会長1人に仕事させるべきじゃないって分かるよねぇ?それとも何?他に何か不都合でもあるの?」
「……」
「相楽…なんかお前、キャラ違わないか?」
委員長を詰るオレに会長が声を掛けてくる。
でも、止めないよ。
「会長が言ったんでしょ?ネコ被りやめろって」
それが例え咎める様な口調だったとしても、怖くない。
だって会長の言葉に従っただけなんだから。
オレの気持ちに、正直に。
「…分かった」
観念したように、委員長が呟く。
「寮長には俺が監督係をすると言っておく。神藤、」
今日は世話になる、そう言った委員長に今度は会長が頭を抱えた。
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