腐った兎 | ナノ


13


あの修羅場から3日。

「相良さん、今日はシチューなんてどうですか?」

あれからオレは学校には行かず、そのせいか過保護さが増した龍硫君。
毎日料理、洗濯、お風呂沸かし。
オレは何もせずに、龍硫君におんぶに抱っこ状態。
とても過ごしやすい生活なんだけど…なんて言うか、窮屈。

「ねぇ、そろそろ学校行ったら駄目かなぁ」
「駄目です」

間髪いれずに、強い言葉が返ってくる。

「どうして?」
「…」

暫くの、沈黙。
やがて、「どうして行く必要がありますか?」ときつめに問われる。
…怖い。

「相良さんの生徒会の仕事は終わっている筈です。役員の特権で、授業に行く必要も無い」
「でも、授業とか…」
「相良さんの学力なら、わざわざ授業に出るまでも無いでしょう。授業のノートは相良さんの親衛隊長…源大くん、でしたっけ?彼が取っているはずですし」
「そうは言っても…」

駄目だ。言い返せる気がしない。
って言うか龍硫君ってこんなキャラだったっけ。
なんだかSっけ出てきてる。怖い。
そして何故そのSっけをオレに発揮するわけ。

がっくりと項垂れていると、何も言わないオレを見て龍硫君は「そう言えばそろそろ…」と、ぼんやりと呟いてる。
なんか怖い。とにかく怖い。

「分かりました」
「え?」
「きっと相良さんにも学校に行ってやりたい事とかあるんでしょう?」

そう言ってオレににっこりと笑いかける龍硫君。
…久しぶりだなぁこの感じ。

「相良さん?」
「…そうなんだよねぇ。今日だけで良いから」
「はい。7時までには帰ってきて下さいね」
「うん。ありがとー」

ぞくぞくと背筋に嫌な感じ。
まさか龍硫君に嫌悪なんて抱くとは思わなかったけど…オレの第六感が言ってるんだよね。
龍硫君って、意外と要注意って。




「失礼しまーす」

あれからオレは真っ先に風紀の部屋にやってきた。
なぜって、気になることがいっぱいあるから。

「…相良?」

幸い部屋には委員長一人しかいない。

「委員長おひさー」
「久しぶり…って、お前体調はもう良いのか?」
「うん、もうピンピンだよ」
「そうか…てっきり、まだ寝込んでるのかと思った」
「…副委員長に言われて?」

龍硫君の名前を出せば、「ああ、随分とお前の事を心配していたみたいだからな」とのお返事。…ふーん。

「あ、そう言えば生徒会の仕事ってどんな感じ?」

実はなんだかんだでちょっと心配だったんだよねぇ。

「まぁ、若干遅れがちだがな。現在は生徒会もちゃんと、機能している」
「えー、そうなんだ」
「あの会長が、周りのフォローをしているからな」
「へぇ…」

ちょっとびっくり。
でもまぁ会長はオレと違って要領良いからね。
きっとオレが悪戦苦闘していたときよりスムーズにいってるんだろう。
他の役員がどうだか知らないけど。

そう考えていると、ふと、委員長が黙ったままなのに気付いた。
疑問に思って顔を上げると委員長がどことなく気まずげな様子でこちらを見ている。

「…なに?」

気になって聞いてみた。

「いや、その…」

珍しく歯切れの悪い委員長。いつもきびきびしてるからなんか新鮮だなぁって考えていると、その口から信じられない言葉が出てきた。

「は…?」
「だから…すまなかった」

どうやら聞き間違えじゃ無かったらしい。
そしてあろう事かオレに深々と頭を下げているし。
なに?なんなの?

「確かに生徒会の仕事が滞っていることで回りに迷惑を掛けていた。だが、俺は仕事をしていない役員どもではなく、お前を責めるような言動をしてしまった。
俺が追い詰めていたのと…同じだ」

嘘。あの風紀委員長が腐れチャラ男のオレなんかに頭を下げるなんて。
…気持ち悪ーい。

「委員長、頭上げてよ」
「だが…!」

なおも言い募ろうとする委員長にオレは苦笑を浮かべた。

「元はといえば、オレがもうちょっとしっかりしていたら…委員長みたいにちゃんとしてたらさ、きっと皆もオレが仕事してほしいって言った時にオレのいうこと聞いてくれたと思うんだよねぇ」

羊子ちゃんも言ってた。オレの悪い癖。
いつもへらへら笑って人と距離を置くから、本当に助けが必要なときに助けてくれない。
この性格は一朝一夕で直るものじゃないけどさぁ…

「そう思ってんなら、お前はもう少し素を出せ」

…その通りだよね、会長。

PreV NexT
ToP


「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -