腐った兎 | ナノ


9(会長視点)




最近では滅多に私用で会わなくなった従兄弟、風紀副委員長の龍硫から来た電話に俺は舌打ちをした。
最近、何かと言えば仕事しろとうるさいあいつ。
失礼な。俺は自分の仕事はきっちりしてる。
出来た俺は自分の仕事なんてとっとと終わらせて、最近ではお気に入りの転入生の所に行っていたが…どうやらそれが遊んでいる様に見えるんだろうな。全く、俺が真面目な事知らない訳じゃねーだろうに…。

会計の優兎だって俺が仕事をしているのは知っているし。
今のまま、仕事して欲しいとか言ってる。今のままの、オレで居て欲しい、と。

そう言えば。
ふと、先日生徒会室で優兎に出会った時の事を思い出した。


『オレはねぇ、君とこれ以上話したくないの』


珍しかった。
いつもは綺麗な顔にすました笑顔を浮かべている彼。
その容姿だけならこの学園一と言っても良い程なのに、下半身の節操の無さが人から敬遠されがちで。加えて、あの、人とは一線引いた様な態度。
作り物の様な気味の悪さに、最初は苦手意識的だって持っていた。
それが…どうだ?

『オレは人の心にずかずか土足で入って来る様な奴が大っ嫌いなの。
オレの事知りもしないくせに勝手な事言わないでくれる?』

無理矢理転入生の腕を振り払う彼は、どこか余裕の無い様に見えた。
初めて見るその姿は、人間臭くて、そして…


鳴り続けている電話に、舌打ちが漏れた。

仕方なく電話に出れば、

『龍也!頼むから今すぐ来い!!』

学園では俺を会長と呼び、敬語を崩さないあいつの素。
珍しい龍硫の言葉に興味は出たが、まあ取りあえず。

「…お前今何時だと思ってる。用事があんならテメェが来いよ」

俺の安眠妨害した落とし前はきっちり…

『この役立たず』

ブチッと切られた電話にしばし固まる俺。

「…上等だ」

誰もが震えるだろう笑顔で、あいつの部屋に向かった。




そうして部屋まで来て見れば…なんだかやけに騒がしい。
よく見れば、龍硫の部屋に担架があるのが見えた。

「龍硫…っ!」

慌てて、そこに走って行けば担架の傍らに立っている龍硫。
顔色は酷く悪いが、担架で担がれる様子はない。
それなら、誰が…?

電話越しの焦った様な声。
そう言えば、龍硫の同室は…

慌てて近寄った俺の目に写ったのは、担架に乗ったまま微動だにしない生徒会会計、相楽優兎だった。

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