腐った兎 | ナノ
10
人に優しく。
それがオレの心情。
人間だれしも嫌われたくない。
ねぇ、それのどこがイケナイの?
嫌われるのが怖いオレは、人に優しくした。
それなのに別の子は、オレのやっている事に対して陰口とか嫌味。
抱いてって言われたから抱いてるだけだよ。
道端で困ってる人をほっとけないような、そんな感じ。
良い子ちゃんだから…逆にあんな非道な趣味に走れたのかな。
普段抑圧されてるのかな。
それならオレは、あの趣味してる時しか生き生きとしてないわけ?
浅く広くなオレの周りには、オレを理解してくれる人なんている訳もない。
ねぇ、よーこちゃん。
オレの気持ちを分かってるの、よーこちゃんだけだよ。
だから早く。
「助けて」
浮かんだ言葉をじっと見つめる、臆病なオレ。
頭が、ガンガンする。
そんな自分の思考にあれ?なんでだろとか考えて。
オレはゆっくり目を開けた。
ここはどこだろう。
なんか、頭痛い。
「…ぁ……ぞーすい、」
近くのテーブルに小さな鍋が置いてあって。
それでようやく、倒れる前の龍硫君との会話を思い出す。
…そうか、オレ倒れたんだ。
もしかして、迷惑とか掛けてないかな。
龍硫君がここまで連れて来てくれたのかな。
良く見たらここ、寮の医務室。
右腕には点滴。
ここの学校は医師を専門に雇ってる。
て事はオレのせいでこんな夜中に先生は仕事したのかな。
…どうしよう、怒られるかも。
怖い。
ギュッと毛布を握った所でドアの開く音。
「…おい」
呼ばれた声は、なんか今は懐かしい生徒会長のもの。
…どうしよう。
慌てて、毛布を頭の上まで掛けた。
「…何してんだ」
呆れた様な声は、どことなく苦笑を含んでる。
でも、安心出来ない。
なんで会長がここにいるのか分かんないけど、きっと体調管理が出来ていないとか言われるんだ。
そうに違いない。
怒られる。どうしよう。怖い。
そんなことを考えていれば、ゆっくりと毛布が引っ張られて。
「お前…なんつー顔してんだ」
呆れ顔のイケメンが、すぐそばに。
そう言えば、人様に怯えた顔見せるの久し振りかも。
PreV NexT
ToP