腐った兎 | ナノ


8


「相楽さん、最近食が細くありませんか?」

あんな手紙じゃ、皆は言う事聞いてくれないみたい。
結局、オレが変わりに仕事しなきゃいけない訳で。
終わらない仕事を夜も遅い頃に持って帰って来れば、龍硫君が心配げに言って来た。

「あ、ごめんねぇ。ダイエット中でちょっと」

なんて言ってみるけど彼は不満気。
食欲無い時とか寝不足の時には食欲って失せるよね。それともガバガバ飲んでるコーヒーのせいかな。
でも彼は、やっぱり納得してないみたい。

「…相楽さんは、基本的に人の好意を自分勝手な理由で無下にはしない方です」

オカン気質も、ちょっと勘弁して欲しいよねぇ。
生徒会の仮眠室で一泊する事が多くなったオレを先日咎めてきたから、今日はちゃんと帰って来たのに。
なんだか帰って来ない方が良かったのかな。

あ、危ない。人様に向かって皮肉言うつもりだったっぽい。
実は余裕がないのかな。

「…ごめんねぇ」

気まずいのと怖いのとしんどいので、声のトーンと一緒に頭も垂れる。
眠い…けど、寝ない様にしなきゃ。

「謝って欲しい訳じゃ、ありません。
…今日は雑炊作ったんです。食べてくれますか」
「…本当?ありがとうねぇ。頂きます」

ゆっくり頭を上げて笑えば、笑い掛けてくれる龍硫君。
良かった。怒られずに済んで。


そんな事を考えたけれど、あれ?
コーヒー飲んでたぽたぽがムカムカになりつつあるお腹から急に吐き気が襲って来た。

「…っう……」
「相楽さん?」

ムカムカがクラクラ。クラクラがふわふわ。
ふらーりよろめいたらそのままがしゃんとテーブルに当たって体が崩れて。


「相楽さ…!…うし……!?…!……うと!!」


真っ黒な視界の中で最後に見えたのは龍硫君の焦った様な顔と声。
なんだかオレの名前読んでどことなく会長みたいな口調になってる気がするけど、幻覚かな。

なんだか限界みたい。

ぶつん。

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