腐った兎 | ナノ


6


やっぱよーこちゃんはすごいなぁなんて余裕ぶってた奴、誰。
オレは激しく楽観的だった自分を殴りたくなった。
いや実際に殴る訳ないじゃん。
痛いの怖い。

オレの趣味が出来ない事と転入生のせいで、最近毎日と言って良い程制裁ばかり。
ただいま学園は荒れております。


「どうしました相楽様ー?」
「え?何がぁ?」
「最近相楽様が元気無いみたいなんで親衛隊長として心配なんでーす」

けらけら笑う銀髪の彼。
源大申一(もとやま しんいち)君。
オレの親衛隊隊長さん。

「わぁすごーい。顔には出ない様にしてたのに良く分かったねぇ」
「だって色気が3割増なんですもん。ハスハス」
「……」

つい閉口してしまう。
彼、オレの事好きだけど他の子とは違う。
多分萌え?優先にしてるんだと思う。

そんな彼だからオレのお気に入り。
よーこちゃんみたいで安心する。

「申一君はあの子どう思う?」
「あの子って誰ですか?」
「えーと、転入生のおうどん君」
「おうどん?……はっ、もしかして王道!?」
「そーそー」
「まっ、まさか相楽様…腐レンズですか!?」
「?えっと、従姉妹のよーこちゃんが言ってたんだけど…」
「そっちかい」

目に見えてがっくりする申一君。
やっぱいいよね。

「オレはさぁ、なんであの子に皆が夢中になるのか分かんないんだぁ」
「えっと、嘘の笑顔を見破られ、一目で瓜二つの自分達の見分けが付いて、何も言わなくても自分の言ってる事が分かる……それだけで個性的な生徒会役員さんは嬉しいんだと思いますけど」
「へぇ…」

よーこちゃんが言ってたオレのやってる事がバレるってのも…あながち正論みたい。
疑ってた訳じゃないけどさ。
まぁ、今は転入生こそが学園の悪い者退治をしてた犯人じゃないかって話も出てるくらいだからねぇ…喧嘩も意外と強くって、呼び出した相手を返り討ちにしたらしいし。
オレがやんちゃしてた時季と若干ズレてるし、喋ってる内容が違い過ぎるって事で、見た目は瓜二つだけど意見は二分してる感じ。

「オレは、体の関係なんて駄目だ、俺が友達になってやるって言われたよ?」
「まさかの王道の魔の手が相楽様に!?止めて下さい相楽様はチャラチャラしたままチワワちゃん食べててぇ!!」
「…正直そんなこと言われる筋合いないから逃げ出したんだけどねぇ」

苦笑気味に呟けば、ぴたりと叫び声を止める申一君。

「王道会計が王道に落ちてない、だと…!?」

うん、良く分かんないわ。

「まさか…会計×脇役?それとも…会計×腐男子フラグ!?くそっ…親衛隊長になったのが裏目に出たか…!」
「あれ?なんか自分の世界に入っちゃった?」
「そう言えば相楽様、人の事名前で滅多に呼ばないのに俺の事は名前で呼ぶし…!」
「よーこちゃんとキャラかぶってるからだよ、ねぇ、聞いてる?」
「ミスった!腐男子受けフラグ叩き折っておくべきだった!相楽様誘われなきゃ手出さないから安心してた!」
「おーい、帰っておいでよ申一くーん」

彼のこーゆー所は苦手。
独りで喋ってる気がして寂しくなるんだもーん。
そんなことを考えてたら彼の体が不自然なほどビクッ、ってなった。

「申一くん?」
「(ヤバいヤバいこの視線は会計大好き親衛隊総隊長の目…!ただでさえ会計と仲良くして目ぇ付けられてるのに…!ヤンデレ萌えるけど、恐ろしいぜ!なんぞこれ!!)相楽様、僕、制裁なんておバカちゃんな事してる親衛隊のせいで他の所と会議しないといけないんで行ってきますねー」
「?大変だねぇ。いってらっしゃーい」

申一くんのお陰でオレの隊は穏健派。
親衛隊とその対象が仲良くしてるのはオレの隊ぐらいだからだろうか、若干物珍しさもあって目立ってたみたい。
そそくさと申一君はその場を後にした。

親衛隊の会議…って事はチワワちゃんの集会だなぁ。
正直、申一くんは顔は良いけどチワワちゃんって感じじゃない。
それでも、チワワちゃんぱくぱく食べてるのにオレの親衛隊がまとまってるのは申一くんのお陰。

そーいえば親衛隊絡みなら風紀副委員長の龍硫君も会議に出席するのかなぁ、今日の夕ご飯遅くならないといいなぁ。
ぼんやりと考えた。

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