腐った兎 | ナノ


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ゆっくり電話を置いて自室の扉を開ける。

「相楽さん!電話は終わったんですか?」

と、慌てて同室者が駆け寄って来た。
彼…実はこの間の風紀の副委員長。名前は乙巳龍硫(きのとみ たつる)くん。

最初は生徒会役員と風紀委員が同室とか揉めたんだけど、結局「じゃあ同室者食べません。だからいつの間にかやってるオレの悪口止めて下さいガラスのハート壊れちゃう」ってオレの言葉で風紀委員長やらなんやらは納得した。
酷いよねぇ、本当。

で、半ば無理矢理決まった部屋だけどオレ的には幸せ。
去年の子は、なんてゆーか肉食獣で何かとオレを食べちゃおうとしてたし。
それに比べれば副委員長はなんてゆーか、癒しママ?
炊事洗濯とかの家事全般が大好きらしくほとんどの家事を自分が率先して、それでも何度か手伝えば褒めてくれる。
オレが食堂行かない時なんかは自分も食堂行かずにオレに献立メニューまで決めさせて。

なんてゆーか、健気。
実はオレの事大好きだよね、この子。

まぁ大人の優兎くんは敢えてそれは言わない事にするのでした。

「終わったよー」
「そうですか、今日は食堂行くんですよね?」
「いや、そのつもりだったけどねぇ。お仕事持って帰って着ちゃったしゆっくりまったりご飯食べながら仕事しちゃおっかなーなんて」
「そう、ですか…」

あーでも、出来れば転入生くんの動き知っておきたいなぁ。
誰かに後で聞くのがてっとりばやいよね。

「あの…」
「うん?」
「実は僕、今日は友達と用事があって食堂に行かないといけないんです」
「え、そーなのー?」

ご飯どうしよう。
そんなオレの気持ちが顔に出てたのか、「相楽さんの夕食は作っておくので…」と言ってくれる龍硫くん。
ぐっじょぶ大好きあいしてる!

「ありがとー!あ、じゃあついでに食堂で面白い事あったら教えてくれる?」
「はい喜んで」

彼はにっこりと微笑んで、「じゃあちょっと夕食準備しときますね。勉強しながらならカツサンドとかの方が良いですか?」なんて気の利く女の子の一面全開にしながらキッチンの方へ向かった。


すごいよねぇ、龍硫くん。
顔は男前に見える部類なのにやってる事はお母さん。
でもま、はにかんだ時に見る笑顔はなんつーか可愛い部類。

確か一年の時はもっとチワワちゃんだったよね。チワワちゃん…つか、ボスチワワ?チワワの中でも飛び切り目立ってた。
まぁ、目立ってたのと会長と絡んでるって事で制裁とかは高頻度だったかな。
会長と従兄弟って事が分かって、年々会長系な男らしさが表立って来てからは制裁とか無くなって来たけれど。
本当は彼専属の親衛隊なんてのも出来掛けてたらしいんだけど、彼が風紀の副委員長になってからはそれも無くなった。
風紀委員長や、風紀委員の何人かには親衛隊が居るのに?って気がするかも知れないけど、副委員長と親衛隊の関係は若干複雑。

生徒会問題は風紀委員長の管轄で。
同じ様に親衛隊問題は副委員長の管轄。

親衛隊の隊員に親衛隊が居ないように、風紀の副委員長には親衛隊を作らないのが決まりらしい。



彼が作ってくれたカツサンドを食べながら、ゆっくりまったり仕事して。
彼が居ないせいで独りきり。オマケに最近のご趣味にも行けないし、今更チワワちゃん呼んであっはんうっふんなんて出来ないから独りきりの部屋。

慣れない淋しさなんて気のせいだもん。
それでもやっぱり持つべきものは、胃袋鷲掴みにする妻だよねえ。


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