良く朝のこと。起きても彼女はそこにいなかった。

今日まで残って、自分の妹が学校に行くかを確認していく可能性も一応考えてはいたのだが、よくよく考えてみれば、あいつは人の心が読めるのだ。自分妹が本当に明日から学校に行こうと考えているかなんてお見通しだろうし、そもそもそれを確認したいのなら、オレのところにとどまるより、自宅に待機していた方が早いだろう。

妹が朝起きて、学校に向かうのを見送ればいいだけだ。

一応、確認すると昨日言ってしまった以上、確認しないわけにも行かないので、昼休みにでも一組に行く事に決めて、オレは学校へ行く準備を始めた。




朝練を終え、教室に向かっている途中、下駄箱で、オレが昼休みに会う予定を一方的にたてていた人物を見掛けた。

「約束通り来たみたいだな」

「あ、あああ、あべくん!?」

「ビビリすぎだろ。ったく、そんなんで大丈夫なのかよ」

後ろから声を掛けると激しく驚かれた。

今回の件は、一応オレにとってホラーであったわけだが、ホラーものの話の主人公になるべきはコイツみたいなタイプだったのではないだろうか。

部の連中がこそこそとこちらを覗いているのが、少しウザい。いや、頭ん中まで覗かれるのよりはマシだけどな。

「あのね、あべくん」

「なんだよ?」

「あべくん、もしかして、お姉ちゃんのお友達だったの?」

「は? なんでだよ?」

ベツにオレは昨日、コイツにあいつの話はしていないハズだ。

「あのね、久々に学校行くから、私、鞄の整理したの、朝に」

「おう、そんで何があったんだよ」

「あべくんへって、書いた手紙が入ってたの。だから、お姉ちゃんからあべくんに宛てての、手紙なのかなーとか、だから昨日、あべくん来たのかな、とか」

「手紙ぃ?」

まさか、ポルターガイストでアイツ手紙まで書けるのか?本当、なんでもアリだな。

いや、アイツ、何故か憑依とかはしなかったけど。

できる事がよくわからないヤツだ。

「あ、これ、なん、ですけど……ゴメンなさい」

「いや、怒ってねーよ。扱いにくいヤツだな」

「ごめんなさ」

「もういいから謝んな! 三橋かお前は!」

そういいながら、彼女の手から手紙を受け取る。

影で見ている連中にはラブレターに見えているかも知れないが、どうでもよかった。

確かに、表面には、見事な丸文字で『阿部くんへ』と書かれている。

これが違う阿部くん宛てなら申し訳ないが、オレは躊躇わずその手紙の封を開けた。


『いろいろお世話になりました。ありがとうございます。最後には榛名くんにまであえたので大満足で……えっへへ、勝手にちゅーとかもしちゃったんだぜー』

脳内だだ漏れな手紙である。思ったこと全部文字にすんのやめろ。

『えーとね、それから、よかったらなんだけど、妹のこと、これからもよろしくお願いします。阿部くんならやれる! と、私は思う! とっても面倒な子だけど、阿部くんになら懐くと思うし、ていうかうん、とにかくありがとうございました! また、来世にでも機会があったらよろしくお願いします!』

来世にでも、というのが少し寂しい気もしたが、感傷に浸るのもらしくないと思い、お盆にはいちいち戻って来そうだけどな。とだけ、思って、手紙を閉じる。

そして、封筒に便箋を戻そうとすると、小さな紙が入っているのを発見。それは小さなメモ帳だったのだが、やはり、中に何がメッセージが書かれているようだったので、開いて見てみる。

『追記! というかps! 妹のことは下の名前で呼んであげてね! 西中妹じゃわかりにくいでしょ!』

確かに、わかりにくいことはないが、西中妹からしたら姉という存在が、あるようで無い今、そんな呼ばれ方をするのは不本意かもしれない。

かと言って、西中と呼ぶのは、オレがわかりにくい。オレにとって、西中=姉なのだ。

「お前、名前なんだっけ?」

「は、はい!?」

「あー、お前の推測通り、オレ、お前の姉貴の知り合いなんだよ。だから西中じゃ呼びにくいっつーか」

「あ、そっか、わかりました、えーとね、私は」

何故か顔を真っ赤にして、しかし笑顔で、彼女は自分の名前をオレに教えてくれた。

「風華って、いいます。西中風華です」

「わかった。明日からもちゃんと学校こいよ」

「だいじょうぶ、くるよ、絶対きます」

「そーか。じゃ、オレ教室戻るわ」

「と、途中まで!」

そう言って風華はちょこちょこと後ろを着いてくるが、いかんせん、とろい。というか、あまり教室に行きたくないというのが丸わかりである。

このままではオレまでホームルームに遅れてしまうので、オレは仕方なく、彼女の手をとり、強引に教室まで引っ張っていくことにいた。

手の掛かる妹が出来た気分である。

まあ、弟もデカくなってきたところであるし、悪くはないかもしれない。

彼女がオレにとって妹以上になるかは、まあ、これからの展開しだいだろう。

握った手から、生きている人間の体温を感じながら、オレは思うのだった。



2012/12/24

後書き

えーと、探偵ごっこのスピンオフでした。西中さんのお話ですね。変換されていたら西中さんのお話です。

名前のことは、探偵ごっこ読まれている方なら、変換画面で、あれ?と思って頂けたかな。と、思います。お姉ちゃんの名前は、優香ですからね。

時系列でいうと、榛名が本編の夢主と親友契約交わした後あたりになると思います。期末試験が終わった後で、西中さんの納骨は、四十九日を待たずに行われた感じです。

相変わらず、邪道な感じの夢ですみません。引き続き、本編の方を楽しんで頂けたら幸いです。

ここまで読んで頂きありがとうございました。
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