- 高校生的恋愛観
さてテスト勉強だ!という話のその前に、もう少しだけ日常を語ろうと思う。いや、もうテスト期間ではあるのだけれど。
なんというか、最近ミー太が構ってくれない。のは仕方がない。だってミー太の大好きな先輩方の最後の大会なわけだし、練習に熱が入るのはわかる。まあ、テスト期間は相変わらず部活不可ならしいけど。伝統は中々覆らないらしい。
もちろんお昼はミー太と一緒に食べる。けれど、その時も会話内容は野球の話ばっかりだし。終いには野球に嫉妬しちゃうぞバカー!というのは流石に冗談だと思う。
と、まあ、それはともかく、最近気付いたのだけど。
「ミー太って、宮下先輩?のコト好きだったの?」
「はあ!?なんでだよ!」
「なんとなくー」
なんか普通に好きだったんだろうなって言うのが、言葉の端々から伝わってくる。
このミー太が普通にですよ?ちはるさんとか私とか好きになるようなミー太が、普通に好きだった人。
よく話にも出てくるし、ちょっと興味があるかもしれない。
「話してみたいなー。宮下先輩」
「なんで」
「ミー太がお世話になってる人だもん。彼女としてご挨拶しないと」
ミー太は、なんて言って私のそのお願いを拒否しようか悩んでいるようだった。
私がしたいということを許さないのはこれで二回目だ。良い傾向であることは間違いないけど、これは私も譲れない。
「とにかくぜってーダメ。許さねー」
「良いじゃん。何が嫌なの」
「なんかわかんねーけど嫌なんだよ」
「じゃ聞くけど、宮下先輩を私に会わせたくないの?私を宮下先輩に会わせたくないの?」
お馬鹿なミー太は首を傾げる。もっとわかりやすく言うべきだったかもしれない。
しかし悩むミー太は可愛いので放置。これぞ放置プレイってヤツです。というか、凄く話は変わるけど、普通のカップルならもうとっくにいろいろ済ませてる時期なんだよね。例えば、ちはるさんと初めて会ったあの日、つまり、ミー太の家に遊びに行った日とか、普通なら何かするべきだったんだろうと思うけど。あの日はまあ、気分が気分だったから仕方ないか。
やっぱ。ちはるさん嫌い。
「もっとわかりやすく言えよ」
ミー太が降参したので、私は彼の頭を撫でて、仕方なく言い直す。
頭を撫でるという子供扱いに、ミー太は少し顔をしかめた。それすらも可愛く見えるのは多分病気だ。
「私に問題があるのか、宮下先輩に問題があるのかって話」
「どっちにもベツに問題なんかねーよ」
「じゃあなんで会わせたくないの」
「オレが今好きなのはオマエだから、気にする必要なんかねーんだよ」
あ、なんだ。最初のを気にしてたのか。
確かにそれも宮下先輩と話してみたい理由の一つではあるけど、私は別に不安になっているわけではない。
ただ、ミー太の好きだった人を知りたいだけ。
ちはるさんの印象が悪すぎるから、それを払拭したいのだ。
ミー太のセンスは、たまには良いのだと思いたい。
「……ミー太が嬉しいこと言ってくれた事だし、それにまあ、今は忙しいだろうしね。夏大終わってからでいいや」
「おー、そうしろ」
「私も元彼より、ミー太の方が好きだから、不安になんかならないでね」
今日はもうお弁当食べ終わってるし。暑いけどミー太の匂いは好きだからミー太の右肩に寄りかかるようにくっつく。
「"の方が"じゃなくてオレだけ好きって言えよ」
「恋愛的にはミー太だけ好き」
「やっぱ自覚ねーよなオマエ。そういうのが隙だっつってんだよ」
いつものように抱き締められた。んでキスされた。
学校でちゅーするのは初めてな気がするので、変に緊張してしまう。
ベツに、誰に見られててもいいんだけどね。
「ミー太最近わがままになったねー」
「はあ?なにが?」
「良いことだから気にしないで」
これなら、今週の土曜日にミー太のうちでする試験勉強の時には無粋な話をしなくても良いかもしれない。
私も出来ることなら、話し合って解決というのはしたくないし、こういうのは自覚しないまま勝手に治る方がいいことだと思うのだ。
「そーいえば、この間のお昼休み、何言おうとしたの?」
「あ?オレなんか言ったか?」
「なんか言おうとして、なんでもねーって」
「忘れた」
気になるなあ。でも本人が忘れたというなら仕方がない。
私は深呼吸して、ミー太の匂いを堪能する。あー、なんか言っちゃなんだけど。
いやらしい気分になってきたかもしれない。半分くらい冗談だけど。
「そういえばそろそろテストだねえ」
「それ言うなよ」
「あのさ、テストの科目に、保健体育ってあったっけ?」
「は、なんでだよ」
ミー太の身体が強張るのがわかった。
話が戻るけど、そろそろいいと思うんだ。
「……わかってるくせに」
耳元でそう囁いてやれば、ミー太の耳は真っ赤に染まる。
ついでに私も真っ赤だから、なんも言えないんだけど。
でもまあ、ちょっとくらい照れても良いよね。女の子が積極的にするって、めちゃくちゃ恥ずかしいんだから。
「なくても、勉強くらいしていーんじゃねーの」
「だよね」
土曜日は、下着とかちゃんと考えて着けてかなきゃなあ、とか。考えるだけで恥ずかしかったけど。
いい加減気持ちだけじゃなく、関係も進展させようか。榛名くん。
2011/06/30