日常、回帰、多分失敗


七月には夏大があるらしい。この間、ミー太がその抽選に行って、そう話していた。

一応孝介にも、その事を訊いてみたら、西浦の相手はまさかの昨年の優勝校だった。ご愁傷様である。

まあ、もし西浦が優勝校さんに勝てても、うちとは決勝まで当たらないし、西浦じゃ流石に決勝までは勝ち上がれないだろう。だから私にはあまり関係はない。

ちなみに、多分うちは決勝まで行くと思う。ミー太が甲子園行くって言ってたから。



そして今日は六月二十一日の月曜日。視聴覚室前の廊下は日当たりが良いため、蒸し暑くなってきたので、私達は、日の差さない位置にある空き教室に退避してお弁当を食べていた。

ちなみに今は、私より先にお弁当を食べ終わった榛名が試合相手について話し終わったところ。

二人で次の話題を模索中なのである。見つからなかったら、二人でキャッキャッウフフのイチャイチャタイムの幕開けの予定。開演時間は決まってないし、そもそも冗談だけど。

「ミー太ぁ、暑いぃ」

「もう言うなって、大体まだンなに暑くねーし」

「暑いぃ」

「だーかーらー」

ちなみに、私が暑いのは気温のせいじゃない。ミー太が弁当を未だ食している私を後ろから抱き締めているのが悪いのである。はっきりは指摘しないけど気付けバカ。

「あーつーいー」

「いーから弁当食えって」

「たーべーにーくーいー」

「はあ?なんでだよ?」

なんでもなにもアンタの腕のせいですよ。言わないけど。

ん?いや、むしろいいかっぷるになるためには、それをしてきするべきだろうか。しかし、いちいちくちをうごかすのもめんどくさい。とける。

「ミー太の腕が私に太るなと言ってるのです」

「言ってねーよ」

「間接的にー」

つまり腕が邪魔で食べれないの!

ここまで言ってるのにミー太は首を傾げるだけで、身体を解放してくれない。私はお弁当を食べるのは諦めることにした。

そんでもって、ミー太にもたれて、甘える。

「食わねーの?」

「食えねーのー」

「ダイエットは身体にわりーぞ」

そうじゃないってば。ミー太わざとやってんのかな。もしかして。

「ミー太ぁ」

「暑いはナシな」

「私の嫌なとこ言えるー?」

ちはるさんとお茶をしたあの日から、結局私はそれについてミー太とちゃんと話せていない。

日数が経っていないこともあるが、あの後、ミー太が凄く困った顔をしてしまったから、私は、もっと落ち着いてるときにちゃんと話すことにした。

それにミー太は、部活の後で疲れていただろうし、私もちはるさんとの会話で疲れていたし。

かと言って今がそのタイミングというわけではなく。だからこれは、日常会話の一環として、軽く訊いてみただけだったりする。

「モテてるのに自覚ねーとこ。」

「それは見た目だけ。私の中身を好きな人なんかいないよー」

「は?オレはどうなんだよ?」

ミー太は私の中身の表面だけ。一番マニアックなヤツだと思う。

マニアックって、"マニア"ってつくわけだから、私をコンプリートするくらい隅々まで愛して恋して好いて惚れて欲しいものなのだけど、私の嫌なとこをそれくらいしかいえないミー太はまだまだちか子マニアには程遠いのであった。冗談じゃないのが寂しい。

「大体、お前は中身も可愛いっつの」

「やだー照れるー」

「棒読みかよ」

だって信憑性薄いんだもん。って言ったらミー太はどんな顔をするだろう。また、あんな困った顔をするのだろうか。

ていうか、私中身可愛くないし。

「あのねー、ミー太はねー」

「つーか、今日は語尾を伸ばす日なわけ?」

「うんー」

「あっそ。で、なんだよ?」

「あのねー、ミー太もー、中身も」ちょっと問題あるけど「かっこいいよー」

「中身だけかよ」

「私、"も"ってちゃんと言ったー」

動きにくいけど、なんとか弁当の蓋を閉めて、お弁当箱を専用の袋にしまう。

それを床に置いて、私はミー太の腕の中を一回転。

後ろから抱き締められるのもいいけど、私は正面も大好きだ。

「なんだよいきなり」

「私もミー太をぎゅーってしたいなあ、と」

暑いけど。ミー太がわかりやすく照れるのが可愛い。

許可も得ずに、優しくミー太を抱き締める。潰しちゃうわけにはいかないからね。ミー太は猫だし。いや、猫じゃないけど。

「つーか、言い忘れてたけど、七月十一日あけとけよ」

「んん。言われずともわかっておる。試合でしょー」

「……サスガはオレの彼女」

「ふふふん。褒め称えるがいい」

それ間接的に"オレ"も褒めてるけどね。

でもミー太は基本的に私よりずっと良い子だから褒められるべきなのです。

「つーかさ、」

「なに?」

「なんでもねー」

なにそれ気になる!と文句を言おうとミー太から離れたところで、予鈴がなったので、私は仕方なくそのまま立ち上がる。

ミー太は何を言おうとしたんだろう。ミー太から何か言おうとしてくれるなんて滅多にないことなのに、予鈴のヤツ、JK2Yだって本当。ちなみに常識的に考えて空気読めの略である。普通にJKKYでも可。

教室に向かうミー太の右腕に抱き付いて、私は暑苦しさと彼の体温を感じる。うざ心地良い。今回は造語が多いな。なにが今回なのかはわからないけど。

ミー太が今日言おうとしたことは、今度テスト勉強を一緒にやるときに聞こう。テスト勉強中なら、あの話をする真面目な雰囲気にもなるだろうし。って、相変わらず私はテスト期間を不純な事にしか使わないなあ。と思いつつも。

それを当然、気に病んだりはしないのであった。

だって、もうこれ以上病みようが無いくらい私達って病んでますからね。



2011/06/21
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